会社の倒産は減っているのに、なぜ労働者は“幸せ”そうに見えないのか:スピン経済の歩き方(6/7 ページ)
帝国データバンクによると、企業の倒産件数が減少しているという。過去2番目に少ないのに、なぜ日本で働く人たちは幸せそうに見えないのか。
中小企業を「延命」しても
日本は世界一の長寿社会なのだが、御長寿がみんな元気なのかというとそんなことはなく、医療機器などの延命措置をなくしては生きられない、いわゆる「寝たきり」の人も世界一多いと言われている。このような状態は「長生き」ではあるが、「人としての幸せ」的にはどうなのか、というのは正直、意見が分かれるところだろう。
また「寝たきり」が世界一多いということになれば当然、介護する人の数も世界トップレベルになる。最近、「ヤングケアラー」という家族の介護をする子どもがどれほどいるのかと調査をしたところ、中学生の17人に1人の割合だということが分かった。
断っておくが、だから「寝たきり」の人などいないほうがいいとか安楽死議論的なことを言いたいわけではない。人にはどうしても寿命というものがある。それを医療や介護で1日でも長く伸ばすことは素晴らしいことではあるのだが、自然の摂理に逆らっていることなので、どうしてもそこには「ゆがみ」が生じてしまう。本人も命を長らえることで、「寝たきり」のように失うものもある。周囲の家族も介護や経済負担が重くのしかかる。良い悪いという話ではない。
実はその「延命」を支えるためには結局、誰かが犠牲になっていて、その幸せが失われている、といういわば「トレードオフ」の関係があるということを指摘したいだけだ。
「世界一会社が潰れない国」というのと、「先進国のなかで唯一賃上げしていない国」というのは、まさしくこのトレードオフの関係にあたる。
事実、最低賃金を引き上げるべきという話になると、日本商工会議所は「そんなことしたら日本中で中小企業が倒産して、大量の失業者があふれかえるぞ」と脅している。だが、これまで見てきたように、中小企業が今のまま「延命」しても、そこで働く日本人はいつまで経っても幸せにはならない。
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