2015年7月27日以前の記事
検索
連載

「高級食パン」ブームは本当に終了したのか? “大量閉店”騒動が隠した本当の姿長浜淳之介のトレンドアンテナ(7/7 ページ)

「高級食パンのブームが去った」という報道が目立つ。SNSでは“大量閉店”の情報が飛び交う。最新の「高級食パン勢力図」から見えてきたものとは?

Share
Tweet
LINE
Hatena
-
前のページへ |       

モスバーガーも進出

 モスバーガーが山崎製パンと組んで、「バターなんていらないかも、と思わず声に出したくなるほど濃厚な食パン」という、岸本ファミリー風な商品名を付けた高級食パンを出している。また、「寅゛衛門(DORAEMON)」という居酒屋を経営してきたDREAM ON(愛知県一宮市)が、「ワンハンドレッドベーカリー」という高級食パンを販売して行列ができている。このように、だんだんと個人の事業から資本力のある外食企業の事業へと、高級食パンの事業主体に変化の兆しが見えてきている。


モスバーガーと組むヤマザキの本気は、防腐剤など添加物が含まれた激安食パンとはまるで別物(出所:リリース)

 モスバーガーは1251店(4月10日現在)もある。21年3〜10月に店舗限定で、試験的に食パンを販売したところ、想定の4倍となる約40万斤が売れた。22年3月11日に再開したが、今回は、チョコ味の食パンも追加してパワーアップ。完全予約制で、毎月第2・第4金曜日しか売っていないが、既に高級食パンの店舗数では最大手になっている可能性がある。


チョコ食パンを3月に発売(出所:リリース)

 ワンハンドレッドベーカリーはバスクチーズケーキも売りで、「エスプレッソ ディー ワークス」というカフェの併設店もある。21年3月、愛知県一宮市に1号店をオープンした最も後発なチェーンだけに、パンだけにこだわらず、売れそうなものを何でも売る姿勢だ。


一宮店、オープン当時の行列。小麦粉100に対して水100の比率(通常70〜75)で柔らかくふんわりした食感を実現(出所:リリース)

高級食パンの今後は?

 果たして高級食パンはこの先、専門店として残れるのか。

 市場が飽和してサバイバル時代に突入しつつあることを見越して、乃が美では3月26日、台湾の台北市「統一時代百貨台北店」に海外1号店を出店した。日本の高級食パンがどれだけ受け入れられるのか、興味深いチャレンジだ。


乃が美は台湾に海外初出店リリース(出所:リリース)

 銀座に志かわも今年中の海外出店を計画している。

 高級食パンは、もうおいしさへのこだわりだけでは難しい。もともと、価格競争で売ってきた商品ではないので、小麦の値上げの影響はそれほど受けないと思われるが、プラスの要素とはいえない。

 銀座に志かわでは「4月1日から苦渋の決断で10%の値上げを決めた。それでも、税込み1000円以下になる価格にした」(銀座仁志川・広報)と、購入者がプチ贅沢を楽しめる金額は1000円までという見解を示した。

 今後の高級食パンは、過当競争により知名度の高い少数のブランドに集約され、あとは地場の個人店が固定客をつかんで残る展開になりそうだ。岸本ファミリーの一部に起こった崩壊現象はその前哨戦だろう。


東京・恵比寿、俺のベーカリー&カフェ(出所:俺の株式会社公式Webサイト)

元祖高級食パン、神戸の地蔵家の食パン(出所:地蔵家公式Webサイト)

2022年4月13日12時30分、一部表記を削除しました

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

挑戦する郷土の味』


前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る