「虹のコンキスタドール」の生みの親 もふくちゃんに聞くマーケティングとマネジメント:成長の仕方は十人十色(2/3 ページ)
企業においてダイバーシティー&インクルージョンやSDGsの概念が広がる中、アイドルグループの「虹のコンキスタドール」は「食と農」という社会貢献と、アイドル活動の融合を違和感なく進めている。インタビューの後編では、音楽プロデューサー福嶋麻衣子さんに「虹のコンキスタドール」をどのようなコンセプトでプロデュースし、マネジメントしてきたかを聞く。
全農とタイアップ 社会貢献の意味
――「虹コン」は全農とのタイアップとして農業体験をしたり、関連する楽曲を制作したりと、アイドル業界でも異色のコラボを展開していますね。どういった経緯で始まったんですか?
全農さんとの取り組みは、もう数年に及んでいます。2019年には「全農の食の応援団」にも任命されました。
虹コンのメンバーは実際、私が見ても、アイドル業界の中で、かなり素朴で純粋なメンバーがそろっていると思うんです。全農さんには、そういうところを評価していただいて、イメージに合致したのかなと思います。
全農さんと取り組ませていただいているYouTubeプログラム(全農presents 届け!ファンファーム)では、メンバーが田植えや野菜を収穫の体験することで「食と農」の大切さを啓発する活動をしています。
――アイドルの取り組みに理解を示さない保守的な人たちにも受け入れられるような工夫や柔軟性が必要ですよね。
実際に農家さんに伺って、ごあいさつし、一緒に作業することを継続するうちに、じわじわと存在を知っていただけるようになれるとうれしいです。ご一緒いただいた皆さんの中には本当にファンになっていただけた方もいて。そういう取り組みを続けていきたいなと思います。
――「アイドル」×「食と農」の組み合わせも他にはありません。この選択にも考えがありましたか?
最近のアイドル業界の傾向として、シックで大人の雰囲気で、社会への反発・反逆をテーマにした潮流があるのですが、明るく元気に「チームでアイドルをする」王道系を、あえて今やるのもいいかなと思っています。王道系アイドルが元気に田植えをして、畑作業をする。ちょっと逆張り的なところもあります。
昨年、小児がん・AYA世代のがん・臨床試験がテーマのチャリティーライブにも出演しました。私たちとしては、社会貢献的な活動にも関与していきたいと思っていて、「食と農」の普及・啓発活動をすることも、こういった考えに立脚しています。
――確かに、そこを狙ったアイドルは少ないかもしれませんね。周りがやらないこと、ブルーオーシャンに狙いを定めた感じでしょうか?
ちょっと違うかもしれません。いくらブルーオーシャンであっても嫌いだったらできないですし、苦手だったらやらないようにしてきました。結果的にブルーオーシャンで勝負してきましたが、それは、好きな上に、ブルーオーシャンだったからです。
「虹コン」の明るく、元気な側面というのは自分にもあると思っています。逆に、ストレートに社会に反発する、反逆するという表現は苦手でした。ただ、「虹コン」の純粋な子たちを見ていると、自然にそういう結果になったのもありますね。
問題を見ながら面談方法を変える
――戦う場所、自分たちの立ち位置を決めたということですね。実際に、楽曲を聴かせていただきましたが、福嶋さんのバックグラウンドが音楽だったことからも随所にこだわりを感じました。コンテンツとしての「虹コン」は、どうプロデュースしているんですか?
ありがとうございます。私の専門は音楽なので、楽曲には全曲関わっています。特にベースラインやドラムなど、低音部分にはこだわりを持っていますね。今も、ベースはできるだけ生音でレコーディングしています。
本当は、音楽のプロデュースだけにしたいと思ってはいるのですが、良い楽曲、パフォーマンスを届けるためには、パフォーマーもマネジメントしなければならないという観点から、楽曲にも、マネジメントにも関わっています。
良い楽曲であっても、メンバーの楽曲への向き合い方、ライブでの表情など、結果的にはマネジメントにひもづいてくる。そんな理由から楽曲、マネジメント両方に関わっています。
――普通は、楽曲制作とメンバーのマネジメントは別であることが多いのではないですか?
この楽曲では、それぞれのメンバーにこういう向き合い方をしてほしい、こういう表情をしてほしいと思うと、普段からそういうマネジメントをしていないとできないですね。マネジメントが適切でないと、結果的にメンバーの取り組み方にも影響を与えます。ずるをするとか、うそをつくとか、絶対にそうなって欲しくないと思ってやっています。
――ビジネスメディアでは、部下の扱い方、マネジメントのコツ、特に若い人のマネジメントは関心の高い領域です。何か心掛けていることはありますか?
今心掛けているのは、話を聞くことですね。
「何でそういう言動になったの?」「その結果を考えなかったの?」「他の可能性はなかったの?」「他の選択肢だったらどうなったと思う?」など、絶対に自分で気付かせるようにします。
メンバーにより異なりますが、悩みを抱えていそうな場合は基本的に1on1の面談、他にもマネジャーを含めた3人での面談、仲間意識を持ってもらう際には、あえて複数人で話す場合もあります。それぞれの状態、その時々の問題を見ながら面談方法を変えています。
――「虹コン」結成から7年を超えて、日本武道館公演を控えていますが、心境は?
みんな「どうしよう?」「どうすればいいんだろう」「何ができるんだろう?」ってテンパってる感じで、必死に毎日頑張っている感じです(笑)。正直、私も成功、失敗、何も見えていません。日本武道館のライブを終えた後、振り返って考えることでしょうか。
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