「生娘をシャブ漬け戦略」で大炎上! なぜ吉野家の役員は“暴言”を吐いたのか:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
吉野家の常務取締役企画本部長が、女性向けマーケティング施策を「生娘をシャブ漬け戦略」などと表現して、大炎上している。それにしても、なぜ大手企業の役員がこのような“暴言”を吐いたのだろうか。筆者の窪田氏は……。
暴言の背景に「重圧」
この役員は18年に吉野家に転職をしたそうだが、そこで大きなミッションとして結果を期待されていたのが、女性客を増やすということだ。東洋経済オンラインのインタビューでもこう述べている。
『客層が偏っていることが吉野家の抱える長年の課題だった。男性ビジネスパーソンやトラックの運転手らが多かった。特に、店内で食べる顧客の男女比は8対2。競合チェーンと比べても男性比率が高い』(東洋経済オンライン 2020年2月6日)
それがかなり切実なものだったのかというのは、19年8月、メルカリのスマートフォン決済「メルペイ」を使ったキャンペーン発表会で発した以下の言葉からも容易に想像できよう。
「10〜20代といった若年層や女性のお客さんがのどから手が出るほどほしい」(日本経済新聞 2019年10月8日)
サラリーマンの皆さん、なおかつ「結果」を求められて要職にヘッドハンティングされたようなご経験のある方ならば分かるだろうが、この役員の方の立場でのプレッシャーはかなりのものだ。
平社員で転職をしたわけではなく、経営陣として迎えられているので、会社側が期待する成果を出さなければ、露骨に冷遇されていく。場合によっては、キャリアに傷がつくかもしれない。朝から晩まで「若年層や女性を増やす」ためのマーケティングを考えたはずだ。
そこでたどり着いたのが、「黒い吉野家」と言われる「クッキング&コンフォート」だ。東洋経済オンラインのインタビューで、このように述べている。
『女性が店に入りづらいのなら、店自体を変えてしまおうと、「クッキング&コンフォート」と呼ぶ新型店舗への改装を進めている。従来のU字形のハイカウンターを廃してソファやテーブル席を設置し、コーヒーも提供してゆっくり過ごしてもらう。郊外をメインに約100店舗が改装済みで、今後500店舗ほどまで増やしたい』(東洋経済オンライン 2020年2月6日)
ちなみに、このクッキング&コンフォートの拡大は、22年から24年までの中期経営計画の中でも掲げている。そのような意味では今、この役員にとっては「若者や女性客の拡大」を会社から求められる敏腕マーケーターとして、かなりの「勝負のとき」なのだ。
その勝負にあまりにのめり込みすぎて、「視野」が狭くなってしまったのではないか。練り上げたマーケティングで、悲願である女性客をとにかく増やしたいという思いが空回りして、成功できるかどうかという不安と期待の混じった高揚感で、おかしなことを口走ってしまったのではないか。
関連記事
- ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - タピオカブームは終焉しても、ゴンチャの店がどんどん増えている理由
タピオカブームは終わった――。コロナ前はものすごく人気があって、店はどんどん増えていったのに、いまはどんどん閉店している。そんな状況の中で、タピオカを扱っている「Gong cha(ゴンチャ)」の店は増えているのだ。その理由を分析したところ……。 - 丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.