増え続ける「ギョーザ無人販売所」はどうなる? ブームの次を見据えた“新たな戦略”:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/6 ページ)
コロナ禍で「ギョーザの無人販売所」が増えている。“ブーム”が巻き起こっているが、どんな事業者が参入しているのか。生き残るために打ち出した、新しい戦略とは。
販売所はどのくらいあるのか
ギョーザの無人販売所は、全国にどれくらいあるのか。
過去に筆者が「餃子の雪松」を経営するYES(東京都国分寺市)に確認したところ、昨年6月には約170店の店舗があった。ところが、1年もしないうちに200店も増えていた。すさまじい勢いである。
展開エリアも、昨年6月当時は関東、北は福島県まで、西は大阪府までに店舗があるのみだった。ところが、現在は北海道を除く、ほぼ全国にまで広がってきた。コロナ禍で閉店する店舗が増えたことで、空き物件も多く出ていたという背景もあるだろう。
しかも、「餃子の雪松」のビジネスモデルに倣った新規参入業者が次々と出現している。筆者が、主なギョーザの無人販売所の店舗数を数えたところ、おおよその業界地図が見えてきた(公式Webサイトや食べログ、Twitterなどを参照)。
【主な餃子無人販売所の店舗数(カッコ内は運営会社所在地)】
- 餃子の雪松(東京都国分寺市)→372
- ふくちぁん餃子(大阪府大東市)→43
- 八幡餃子(宇都宮市)→35
- やさしい餃子(東京都渋谷区)→30
- 雪村餃子(茨城県土浦市)→26
- 餃子香月(徳島市)→25
- 50年餃子(名古屋市)→23
- 福耳餃子(福岡県新宮町)→21
- 神戸餃子楼(神戸市)→17
- 三三餃子(福岡市)→13
- 神戸元町餃子(大阪市)→12
- 美味工場委員会(水戸市)→11
こうして見ると、「餃子の雪松」が他を圧倒的に引き離して業界トップ。あとは小チェーンが乱立している状態だ。今は小規模でも、1〜2年後にはあっという間に業界2〜3位に躍り出るチェーンが出現することもあり得る。
後述するが、コロナ禍になってから「餃子の雪松」の成功を見て、どっと参入してきた新しいチェーンの背後には資本力のある事業者が多い(大手・中堅の外食など)。イチから起業してのし上がろうという、生粋のベンチャーが少ないのも特徴だ。
ギョーザの無人販売所が成功するには、“味”がもちろん重要だ。しかし、ギョーザを大量生産する工場設備や、店舗を大量出店する物件開発といったように、イニシャルコストがかかる。そのため、誰でもできそうに見えて、資本力がないと競争に勝つのは難しいと考えられる。
ただし、いったんオープンしてしまうと、店舗を運営していくランニングコストは低く抑えられる。無人で24時間営業できるので、人件費がほとんどかからないからだ。家賃についても、駅前一等地のような高い場所を借りる必要がないので、それほどかからない。冷凍庫を動かす電気代はかかるが、そこまで目くじらを立てるほどではないだろう。
ギョーザの無人販売所ができると、地域の人がSNSで情報を拡散してくれる。また、話題の業態なので、ローカルな情報誌やテレビ局の取材が入るチャンスも多い。従って、販促費もそれほど要らない(現在、「餃子の雪松」はテレビCMにも注力している)。
関連記事
- レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - スシローとくら寿司 「価格帯」と「シャリ」から見えた戦略の“決定的”な違いとは
大手回転寿司チェーンのスシローとくら寿司。標準的な寿司の重さはほぼ一緒。しかし、価格とシャリの違いから戦略の違いが見えてきた。 - 新成人が「欲しい車」ランキング 3位はレクサス、2位はBMW、1位は?
ソニー損害保険は新成人(2001年4月2日〜02年4月1日生まれ)を対象に実施した「2022年 新成人のカーライフ意識調査」の結果を発表した。新成人が欲しい車とは? - 「家なんて買わなければよかった」と思う瞬間ランキング 1位は「ローン返済が苦しいとき」、2位と3位は?
「家なんて買わなければよかった」と思う瞬間は? 経験者にアンケート調査を実施したところ、1位は「ローン返済が苦しいとき」だった。 - 「高級食パン」ブームは本当に終了したのか? “大量閉店”騒動が隠した本当の姿
「高級食パンのブームが去った」という報道が目立つ。SNSでは“大量閉店”の情報が飛び交う。最新の「高級食パン勢力図」から見えてきたものとは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.