iモード生みの親・夏野剛が斬る「オールドスペースからは日本の宇宙産業は何も生まれない」:ホリエモン×夏野剛(1)(2/3 ページ)
KADOKAWAは、ホリエモンこと堀江貴文氏が取締役を務める宇宙開発ベンチャー、インターステラテクノロジズに出資する。なぜ、出版をはじめとした総合エンターテインメント企業が宇宙開発に出資したのか。4月には都内のIST東京支社で、堀江氏と夏野氏が対談。日本の宇宙開発ISTをはじめとする日本の宇宙開発ベンチャーに賭ける思いを明かした。
「ニュースペースが未来」 スペースXが証明
夏野: 民生用の部品が使えると価格が圧倒的に下がる。NASAも自分たちでロケットを作らなくして、全て民営化していった。NASAの場合は、なおかつ人材を全部放出したわけですよ。それをスペースXなどが全て引き取ってやっているわけじゃないですか。日本も同じことやるべきなんですよね。
堀江: 日本でも瀬戸際の時期に来ていて、今、国主導のオールドスペースと、民間主導のニュースペースっていう企業群に分かれてきているんですよ。で、オールドスペースはもうコスト的にニュースペースには全く太刀打ちできない状態になっています。実はコンピュータの世界でも過去に似たようなことがあって、基本は有償でしか使えなかったUNIXと、無償のLinuxというOSの違いみたいな感じなんですね。Linuxがでてきたことによって、誰でもインターネットのサーバを作れるようになり、はじめて民主化したんですよ。
夏野: その結果、90年代後半になるとパソコンパーツの部品がいっぱいでてきた。秋葉原のお店で売られている部品を組み合わせるだけで、すごいコンピュータを作れることが可能になった。
堀江: そうなんですよ。今ちょうど宇宙が同じような状況になろうとしています。オールドスペースの宇宙開発だともうどうにもならない。「ニュースペースこそがこれからの未来だ」っていうことを、スペースXが初めて証明したわけです。
夏野: ただね、スペースXがそれを証明できるようになった要因は、NASAの技術者を全て解放したことと、米国政府がちゃんとお金をつけたことだと思いますね。実は私は、内閣府の宇宙政策委員会の委員をしていたことがあるんだけど、そこにいた三菱重工とNEC、IHIと三菱電機の4社の役員に「何で一緒にならないの」と言ったことがある。「あなたの会社で宇宙開発部門の受け入れは10%ないでしょ」って言ったら、10%はないですって。
堀江: 三菱重工は大体1%です。
夏野: でしょ。そうすると、会社全体から見たら宇宙ビジネスなんて本当に一部になっちゃう。
堀江: そうです。
夏野: でしょ。そこにとてつもない可能性があるからどーんと投資しようなんて誰も思わないじゃない。あなた以外の役員は誰も宇宙のことを分からないんだから、早く一緒になってくださいよって言ったら議事録から消されました(笑)。
宇宙産業の再編が必要です。だから僕は、今回ISTに少しお手伝いしたいと思っているのは、そこですよ。オールドスペースからは日本の宇宙産業は何も生まれない。
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