1000円超の“高級のり弁”に行列、外食大手も注目 昔懐かしい国民食がなぜブームに?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
「のり弁」ブームが起きている。1000円超の高級弁当を売る店には行列ができており、大手外食チェーンも注目している。消費者に支持される背景を探った。
大手そばチェーンが「のり弁」
全国に200店超を展開するゆで太郎。「挽(ひ)き立て」「打ち立て」「茹(ゆ)で立て」の本格的なそばをクイックに提供。従来の立ち食いそばとは一線を画す。
そのゆで太郎を展開する、ゆで太郎システム(東京都品川区)では、20年11月より丼メニューとしてのり弁を発売。外食でのり弁を販売するのは、おそらく初ではないだろうか。出来立てののり弁をテークアウトするのも可能だ。
メニューは「太郎のり弁」(540円)、「ミニのり弁」(330円)。のり弁とそば(温・冷)との「満腹太郎のり弁セット」(800円)、「ミニのり弁セット」(600円)となっている。
なお、のり弁が好評のため、同メニューを100円引きとする「のりのり祭」を開催中だ(開催時期は4月1〜30日)。
ゆで太郎システムの池田智昭社長は、のり弁を世に出してベストセラーになったほっかほっか亭の出身。同社・広報によれば「池田社長にとって思い出深い商品だ」という。ゆで太郎で使っている食材をよく見ると、白身魚のフライなどほんの少しを足しただけで、のり弁ができる。そのため、実際に作って提供してみると、顧客に受けた。
ほくほくのごはんの上に、焼のり、白身魚のフライ、ちくわ天、から揚げ、鰹節、高菜炒め、めんたいこ、焼鯖がびっしりと乗っていて、ボリューム感ある庶民派B級グルメに仕上がった。1人で来店して黙食する人も多いセルフサービスの業態で、外食でも非接触性、安全性が高いと見なされたので、気軽に来店する人も多かった。
スーパーが開発したのり弁
お茶漬けにして食べるのり弁という新発想で人気なのが、神奈川県の食品スーパーであるスズキヤが開発した「鮭と彩り野菜の茶々のり弁」だ。
スズキヤは逗子市を本拠に、湘南地域を中心に12店を展開するローカルスーパー。お弁当・お惣菜大賞の常連で、毎年受賞を重ねている。同社ではパート、アルバイトを含めて、社員の誰もが新しい弁当や惣菜を提案するチャンスがある。1人や2人の開発担当者で考えるのではなく、全員参加でベストな商品を追求するから秀逸なアイデアが出てくる。
鮭と彩り野菜の茶々のり弁は、西鎌倉店で提案された商品だ。お茶漬けが好きな女性パートナー社員が、「お茶漬けにするにはどんなのり弁が良いのか」という発想で考案した。
この商品には、即席のお吸い物の素が付いている。最初は普通にのり弁として食べる。半分くらいまで食べ進めたら、お吸い物を注いでお茶漬けにする。いわゆる“味変”を楽しむ、ひつまぶし風の弁当となっている。
「お茶漬けにしておいしく食べられるように、あられの代わりに天かすを入れ、ごはんに昆布茶が混ぜ込んであります。こういった細かいしかけも楽しんでほしい」と、同社・広報が自信を持って推奨する傑作である。
小さく切ってごはんの上に敷き詰めたのりの上に、1口サイズのおかずがびっしりと乗っている。おかずは、分厚い鮭、玉子焼、煮物、きんぴらごぼう、金時豆、磯辺揚げなど。
通常のヒットしている弁当では1日に4万食くらいが出るが、鮭と彩り野菜の茶々のり弁は10万食を販売する。午前中に完売してしまう日も多いほどの人気ぶりだ。
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