1000円超の“高級のり弁”に行列、外食大手も注目 昔懐かしい国民食がなぜブームに?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
「のり弁」ブームが起きている。1000円超の高級弁当を売る店には行列ができており、大手外食チェーンも注目している。消費者に支持される背景を探った。
から揚げの天才も参入
テークアウトの事業再構築に、のり弁を活用する動きもある。
ワタミの展開するから揚げ専門店「から揚げの天才」は18年、東京都大田区に1号店を出店。コロナ禍に突入した20年から急速に拡大し、21年10月には112店に達した。しかし、から揚げ業態の競争激化で不採算店も目立ち始め、急ブレーキ。現在は100店にまで減少している(22年4月26日現在)。
これまでは、1個106円の「デカから」と、実家が築地場外の玉子焼き専門店「丸武」であるテリー伊藤氏がプロデュースする「玉子焼き」(702円)を中心に売ってきた。
ところが、巻き返しのため弁当を中心に据える戦略に切り替え、今年2月より「のり弁」(322円)をメインに販売している。差別化として、白身魚のフライは国内最大手の水産会社から仕入れ、競合他社と「同じ以上」の「大きさ」と「味」にこだわったという。
また、のり弁に名物デカからが加わった「天才のり弁」(430円)、さらにタルタルソースが付いた「タルタル天才のり弁」(463円)などの商品も販売している。デカからも当初の3種類から、今は8種類に増えた。現状のデカから1個の価格は、白(塩麹の極出汁)と黒(秘伝の黒醤油)が106円で、残りの6種類は128円となっている。
のり弁で勢いに乗って既存店売り上げのV字回復、再出店拡大なるか。注目される。
開拓者のほっかほっか亭
最後に、のり弁の開拓者にして、誰もが知る国民食へと普及させた、ほっかほっか亭に触れないわけにはいかない。これまで、冷えたごはんとおかずが当たり前だった弁当の世界に、炊き立ての温かいごはんと出来立てのおかずという外食の発想を持ち込み、まさに革命を起こした偉大なチェーンだ。
現在は、ハークスレイ(大阪市)が全国に917店(22年3月現在)を展開している。
「のり弁当」(390円)は、ごはんの上に花かつおとだしじょうゆ、その上に大判ののりが敷かれている。のりの上に、白身魚のフライをメインの具材として、磯辺揚げ、きんぴらごぼうが乗る仕様となっている。別添でマヨしょうゆ(タルタルソースに変更可)が付いているのが現在の形だ。
20年11月にリニューアルされて、白身魚のフライ用にマヨしょうゆが付くようになった。他のチェーンの商品にはないソースの差別化だ。
初期ののり弁は焼き魚が乗っていたが、1枚ずつ焼くのが面倒なので、白身魚のフライに変更され、それだけでは寂しいとちくわ天も入れて現在のスタイルになった。背景には、魚を保存する冷凍技術の発達やフライヤーの改良があった。創業者、田渕道行氏の発想だった。
ほっかほっか亭では今ものり弁を改善し、売れ筋として大事に販売している。
今やのり弁は、お土産用の高級弁当、駅弁、お茶漬けになるもの、外食の丼などと、多種多様な商品が出回っている。おかずの具材も、海の幸、山の幸、さまざまだ。しかし、家庭料理を基本としている点は変わらない。これからも国民食として、愛され続けるのではないだろうか。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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