漫画家・赤松健に聞く海賊版ビジネスの課題 電子化がもたらす若手作家への功罪とは:漫画村問題を語る(4/4 ページ)
「漫画村」閉鎖以後も、海賊版サイトが完全になくなったわけではない。「漫画村」以後の漫画海賊版ビジネスの現状や、電子化に代表される漫画業界の課題を、日本漫画家協会で常務理事を務める漫画家の赤松健さん聞いた
新人作家は電子書籍しか出さないケースがほとんど
――漫画家には雑誌連載時の原稿料の他に、単行本化された際の本の印税と、電子書籍の配信の収益という両方があると思います。このバランスはどのようになっているのですか。
紙の単行本の場合は、基本的には刷った部数の10%が印税として作家に入る仕組みになっています。刷った分で発生するので、それが売れなくても漫画家にはお金が入るわけです。ですから、出版社がかなりのリスクを負っているんですよね。だから少なめに刷るか、多めに刷るかは非常に重要な問題になります。
この点、電子書籍に関しては読まれた分しか作家にお金は入りません。もともと紙が売れるような作家さんは電子もすごく売れるので、さほど問題はないのです。実は、今の新人作家は、出版社に不利な紙の単行本を出さず、電子書籍しか出さないというケースがほとんどなのです。
――若手漫画家の収益が電子書籍の実売ベースというのは、以前よりも厳しい状況に置かれているというわけですね。
売れた数だけというのは正直厳しいなと思いますよ。あと、電子書籍は紙のものと違ってスキャンして取り込む手間がかかりませんから、海賊版の被害をもろに受けます。電子書籍版がヒットして紙の単行本が発売される場合もあるものの、既に電子海賊版を読んだ人が、あとで紙のものを買いたいというケースは基本的にないですよね。
――海賊版の被害や、電子書籍の普及によって、若手作家が以前より厳しい状況に置かれがちな点など、多くの問題があると思います。今後どういう活動を続けていく考えですか。
私以外にも国会などに出てこうした問題を説明できる漫画家がいればいいのですが、それが苦手な漫画家が多いのが現状です。また、現役で人気のある漫画家には、創作活動に集中してほしいと思っています。これまで私は海賊版をはじめとする著作権関連や、表現規制関連の問題を10年以上担当してきましたが、表現規制にしても、海外からの外圧を一方的にのもうとしてしまう動きもあります。
日本独自の表現文化を守るためにも、また漫画家の立場を守っていくためにも、表現文化の素晴らしさや問題を自分の言葉で訴えていきたいですね。
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