漫画家・赤松健に聞く海賊版ビジネスの課題 電子化がもたらす若手作家への功罪とは:漫画村問題を語る(3/4 ページ)
「漫画村」閉鎖以後も、海賊版サイトが完全になくなったわけではない。「漫画村」以後の漫画海賊版ビジネスの現状や、電子化に代表される漫画業界の課題を、日本漫画家協会で常務理事を務める漫画家の赤松健さん聞いた
スマホで漫画を読む習慣が広まった
――漫画村の功罪の中で、数少ない功を強いて挙げるとすれば、もちろん違法ではあるけれど、スマホで漫画を読む習慣が広まった面はあると思います。オフィシャルな月額課金のサービスで、漫画村のようにいろいろな漫画が電子で読めるサイトができれば、一気にユーザーがそこに移行したのかなとも思うのですが、そうはなりませんでした。
そういう話は確かにありました。漫画村が読者側にとって便利だった点として、『ジャンプ』『サンデー』『マガジン』『チャンピオン』などの作品が全て一つのサイトで読める出版社横断だった点がありました。
確かに出版社横断で、サブスクの月額課金で漫画が読み放題なサイトができたら、かなりの需要があると思います。ただ、現状は『ジャンプ』や『マガジン』でも、それぞれの出版社で作家を囲い込み、その作家の知的財産を独占しようとする動きがあります。なので、全出版社横断でサブスクというのは夢ではあるものの、現実にはなかなか難しいですね。
――漫画に対し、アニメのほうはdアニメストアやAmazonプライム・ビデオなど、一つのサービスで多くの作品を配信しています。
漫画は権利者が作家一人なので、その作家を抱える出版社にどうしても左右されてしまいます。その点アニメは基本的に出資した複数の企業が権利を持っていますから、そういうドラスチックな展開がやりやすい面があります。
ただ、作品の中身でいえば、漫画は設備投資がそれほど必要なく、少ないコストでいろいろな実験ができるので、意欲的なヒット作が生まれやすい面があります。アニメは製作に資本が必要なので、なかなか挑戦的な作品を作りづらい部分がありますね。
――昨今では漫画の電子書籍の売り上げも上がってきていると思いますが、どのように見ていますか。
メジャー少年誌では紙の売り上げが圧倒的でした。理由は簡単で、電子書籍を買うにはクレジットカードが必要ですが、子どもはクレカを持てないですよね。だから電子書籍で読みたくても買えない背景がありました。最近は、少子化も進み、大人向けの漫画も増えましたから、電子書籍の方が紙の売り上げを上回りました。
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