『ラブひな』作者が明かす漫画業界のDX 打ち切り作を実写ドラマ化した絶版ビジネス:コミック市場の売上高が過去最高(1/4 ページ)
少なくとも、流通の分野では漫画業界のDXは進んでいると言える。だが、制作の現場においてはどうなのだろうか。日本漫画家協会常務理事を務める、漫画家の赤松健さん(53)に現状を聞いた。
コロナ禍で多くの業界が未曾有の被害を受ける中、業績を伸ばしたものもある。その一つが、漫画やゲームに代表される一部のエンタメ業種だ。特に漫画の業績の伸びは著しく、全国出版協会・出版科学研究所の調査によると、2020年の紙と電子媒体を合わせたコミック市場の売上高が6126億円と、過去最高を記録した。
翌21年は6759億円に伸ばし、その記録を更新している。これにより、出版市場全体におけるコミックのシェアは40.4%になった。
この背景にあるのが、新型コロナウイルス感染拡大の影響による巣ごもり需要だ。これに伴い、自宅で手軽にダウンロードしてそのまま読める電子版の需要も高まっている。コミック全体の売上高のうち、電子版のシェアが20年は約52.9%、21年は約60.9%を占め、半数を超えているのだ。
少なくとも、流通の分野では漫画業界のDXは進んでいると言える。だが、制作の現場においてはどうなのだろうか。例えば、同じエンタメ業種でも、アニメやドラマといった映像制作においては、20年4月の緊急事態宣言の影響を受けてスケジュールが乱れ、テレビ放送や映画公開の大幅な日程の変更を余儀なくされた経緯がある。
この点、漫画においては新型コロナウイルスの感染者や感染疑い者を出した雑誌編集部では出版スケジュールをずらした企業はあったものの、業界全体に大きな影響は出なかったといえる。コロナ禍の漫画業界では何が起きているのか。日本漫画家協会常務理事を務める、漫画家の赤松健さん(53)に現状を聞いた。
赤松健(あかまつ けん) 漫画家、株式会社Jコミックテラス取締役会長、公益社団法人日本漫画家協会常務理事、表現の自由を守る会最高顧問。1968年、愛知県生まれ。私立海城高等学校から中央大学文学部国文科へ進学。代表作に『ラブひな』『魔法先生ネギま!』など。2011年より、絶版となった漫画などを電子書籍として配信するサイト「Jコミ(現マンガ図書館Z)」の運営をスタート
制作現場のデジタル化は進んでいた
――コロナ禍になってから漫画業界が特に好調です。何が要因だったのでしょうか。
漫画業界はコロナに強い業界だったといえると思います。漫画も一人で制作するのはなかなか大変なので、特に週刊誌の場合は複数人のアシスタントと工程を分担して作るのですが、実はコロナになる前からデジタル化が進んでいて、フルリモートによる分業が多かったんです。
チーム内のクラウドで原稿をあげて、漫画家が「ここ仕上げて」と指示を出して、各アシスタントがその原稿のデータを元に次の工程に進み、データの上に作業を重ねていく形です。電話もSkypeでしたし、LINEで指示を出す形がコロナ禍になる前から多かったです。
――制作現場のDXが既に進んでいたというわけですね。アシスタントはどのような形で集めているのでしょうか。
アシスタントの募集サイトがいくつかあるのですが、そこを使いオンラインで求人を出していますね。仕事内容も、漫画家本人の事務所に行く形はあまりなく、リモート作業を前提としたアシスタント募集が大半です。私自身も「GANMO(がんも)」というアシスタント募集サイトを2012年から運営しています。
――「GANMO」は、なぜ立ち上げたのでしょうか。
もともと他のアシスタント募集サイトがあったのですが、閉鎖してしまったことがあったんです。当時は他にポータル的なアシスタント募集サイトがなかったものですから、漫画業界の人がみんな困っていたので、急きょ私が作った形です。
サイトを見ると書いてありますが、『ジャンプ』『マガジン』『サンデー』『チャンピオン』の4大誌をはじめとする雑誌名で「新連載のアシスタント募集」のような形で求人が出てきます。
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