『ラブひな』作者が明かす漫画業界のDX 打ち切り作を実写ドラマ化した絶版ビジネス:コミック市場の売上高が過去最高(2/4 ページ)
少なくとも、流通の分野では漫画業界のDXは進んでいると言える。だが、制作の現場においてはどうなのだろうか。日本漫画家協会常務理事を務める、漫画家の赤松健さん(53)に現状を聞いた。
絶版本の配信サービス「マンガ図書館Z」
――アシスタント募集サイトが出る前までは、どのような形で募集していたのでしょうか。
各漫画家が自分のサイトで求人情報を出していたケースもありましたし、新人賞に応募してきた人を編集部が漫画家に紹介するのが主でしたね。
――漫画家の中には手描きや、コピックに代表される画材での彩色にこだわる人も一部いると思います。全体としては制作のDXは進んでいるのでしょうか。
かなり進んでいると思います。雑誌によって変わってきたりはしますが、例えば『マガジン』の場合は、紙に描いている人は1人か2人だと思います。成人誌では、ほぼ100%の作家がデジタルに移行していると思います。
――他にも赤松さんは、「マンガ図書館Z」というサービスを手掛けています。これはどういったものなのでしょうか。
マンガ図書館Zは、絶版となった漫画、ライトノベルなどを、作者の了解を得た上で電子書籍として配信するサイトです。全て無料にしていて、サイトへのアクセスの広告収益を各作品の作者に分配するビジネスモデルになっています。
――絶版本を対象とすることで、作品のアーカイブも兼ねる形になりますね。ただ、絶版した本は権利も切れてしまうとは思いませんでした。
単行本が絶版になって、作者と出版契約が解除された状態になると、実はもう出版社には何の権利も残っていないんです。あとは権利者が作者だけになりますから、漫画家の先生の許諾さえとってしまえば、こちらで電子化してサイトに公開できるようになるわけです。
――具体的にはどういったタイミングでもともとあった出版権が切れるのでしょうか。
基本、出版契約というのは双方が何も言わなければ自動延長されるものです。なので、延々と出版社が権利を持っていることも確かにあります。ここでの権利というのは「出版権」であって、著作権ではないのがポイントですね。
出版社と漫画家との間で交わされる出版契約はケースバイケースなのですが、大抵は契約時から1年や3年、5年などといった期間は切ってはいけない条項があります。でも、それが過ぎて作者が「切ります」と言えば、出版権はもうその出版社はなくなるんです。
――一般的に出版社のほうが強い力を持つ印象がありますが、一方的に出版権を保持することはできないんですね。
「もう切りますよ、全部引き上げますね」と漫画家が言ったら、出版社は「待て待て待て」とは言うと思います。でも、漫画家が「何で待つの? じゃあ刷ってくれるの?」と言って、出版社が「刷りません」って言ったらもう止められないですね。
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