『ラブひな』作者が明かす漫画業界のDX 打ち切り作を実写ドラマ化した絶版ビジネス:コミック市場の売上高が過去最高(3/4 ページ)
少なくとも、流通の分野では漫画業界のDXは進んでいると言える。だが、制作の現場においてはどうなのだろうか。日本漫画家協会常務理事を務める、漫画家の赤松健さん(53)に現状を聞いた。
日テレでドラマ化された『逃亡医F』
――絶版作品を無料で読めるようにしたことで、一度は日の目を浴びずに終わってしまった作品でも、再評価されることがありそうですね。
実際にドラマ化された作品もあります。1月から3月にかけて日本テレビ系列で放送されていた、『逃亡医F』です。原作となった漫画『逃亡医F』は、07年から08年にかけてとある雑誌で連載されていたのですが、単行本化もされないまま終わってしまったんですね。なので、出版社は作者と出版契約さえ結んでいない状態だったのです。
それでマンガ図書館Zで、3巻構成で電子書籍化して配信していたんですが、それを日テレのプロデューサーがたまたま読んでいて、「これはいい!」ということで実写ドラマ化しちゃったんですよ。単行本にもならなかった作品がこうして脚光を浴びるのは素晴らしいことですよね。
――いい素材の作品でも時代に合わなかったりして、その連載当時はヒットしなかったものもあると思います。
先生も喜んでいましたよ。単行本にならず、それまでその作品の収入は雑誌掲載時の原稿料しかなかったわけですから「正直赤字だった」と作者の先生もおっしゃっていました(笑)。実写ドラマ化ともなれば、原作使用料も当然作者に入りますしね。
――最近の漫画業界の動きについてもお聞きします。韓国発祥で、スマホなどで縦にスクロールして読んでいく「ウェブトゥーン」と呼ばれるフルカラー漫画が日本でも広まってきています。漫画の作り方も、漫画家一人の個性が強い日本のものに比べ、シナリオや原画、彩色まで別々の人が担当するなどチーム色が強く、対照的です。この流れをどう見ていますか。
スマホというツールに特化した縦読み漫画の試みはすごく面白いと思います。チーム作業を前提としている点もそれはそれで面白いものが生まれるのではないかなと期待しています。日本漫画は一人の才能にすごく寄ってしまっている面は確かにあります。でも、その分いっぱい失敗もできるし、チャレンジもできるメリットもあります。
ただ、『鬼滅の刃』など旧来のスタイルの漫画も海外ではバカ売れなわけですから、縦読みに取って代わられるわけではないとも思っています。両立して切磋琢磨していく環境になればいいですね。
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