サイゼリヤがコロナ前をはるかに上回る利益水準になった理由:NEW! 妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(2/7 ページ)
決算書で分かる日本経済の動向という事で、4回連続で飲食企業4社の決算を取り上げて、日本の飲食企業の現状を見ていきます。今回取り上げるのはサイゼリヤです。もちろんイタリアンのファミリーレストランであるサイゼリヤを運営している企業です。
赤字継続も経常利益は大幅に黒字化
さて、非常にざっくりですがサイゼリヤのここ数年の業績が分かったところで「じゃあサイゼリヤの現状はどうなっているの」ということで、直近の決算発表を見ていきましょう。
今回見ていくのは22年8月期の第2四半期(21年9月〜22年2月)までの業績です。
売上高は10.1%増の692.1億円、営業利益は7.8億円の赤字→4600万円の赤字、経常利益は2.5億円の赤字→76.6億円の黒字、純利益は5.6億円の赤字→50.3億円の黒字となっています。
営業利益ベースでは赤字継続となりつつも、経常利益や純利益は大幅に黒字化していることが分かります。
続いてコロナ前の業績とも比べてみましょう。19年8月期の第2四半期までの状況と比べてみます。
売上高は8.4%減、営業利益は35.1億円の黒字→4500万円の赤字となりつつも、経常利益は101.7%増、純利益は175.5%増となっていて、コロナ前をはるかに上回るような利益水準となっています。
ちなみに営業利益は本業での利益のことで、サイゼリヤの運営でどれくらい稼いだのかを表していて、経常利益や純利益はそれ以外の企業全体の活動も含めた利益のことです。
つまりサイゼリヤは、本業ではコロナの悪影響が続いているものの、それ以外で大きな利益を出していたわけです。
ではどういった本業以外の利益が大きかったのでしょうか。実は営業外収益として補助金収入が75.2億円もあることが分かります。つまり、サイゼリヤは時短協力金などの補助金収入によって、コロナ前の倍以上の利益水準になっていたということですね。
小規模事業者が補助金で潤っているという話はよく出ていましたが、実はサイゼリヤのような大手チェーンも補助金で好調になっていたワケです。他の飲食チェーンも同様な状況の所が多いです。今後は経済正常化に伴い補助金の影響はなくなっていくことが考えられますので、実は経済正常化によって飲食チェーンは経常・純利益ベースではむしろ業績悪化となる可能性がありそうです。
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