「1日1500万人」の来客を生かす ファミマが“広告メディア”になる日:効果測定には「AIカメラ」(1/3 ページ)
コンビニ大手のファミリーマートは2021年9月、伊藤忠商事との共同出資により新会社「ゲート・ワン」を設立した。その目的は、ファミリーマート店頭にデジタルサイネージを新たに設置し、これを活用したメディア事業を立ち上げること。
「1日1500万人」という稀有な顧客接点を生かしたメディア事業
コンビニ大手のファミリーマートは2021年9月、伊藤忠商事との共同出資により新会社「ゲート・ワン」を設立した。その目的は、ファミリーマート店頭にデジタルサイネージを新たに設置し、これを活用したメディア事業を立ち上げること。
具体的には、店舗内のレジ上部に3面の大型デジタルサイネージを設置し、独自制作したコンテンツや広告の動画を流す。現在は試験導入の段階で、22年6月末までに全国約1万6600店舗のうち、約3000店舗にこの仕組みを導入する予定だ。
この新事業の立ち上げに至った背景について、ゲート・ワン社長室長の松岡豪氏は次のように説明する。
「人口減少やスーパー・ドラッグ店との競合など、コンビニを取り巻く経営環境は急速に変化しています。この変化の時代を生き抜いていくために、新たな収益の柱を作ることが急務でした。そこで、ファミリーマートが既に持っているアセットを有効活用することで何か新事業を創出できないか、検討を重ねてきました」
その結果20年に新たに立ち上げたのが、ファミリーマート店舗で収集したPOSデータを活用したデジタルマーケティング事業だった。20年10月には、この新事業を遂行するための会社「データ・ワン」を新たに設立している。
そしてPOSデータと並ぶもう一つの既存アセットとして着目したのが、「店頭でのリアルの顧客接点」だった。
「ファミリーマートの店舗には、1日1500万人もの来店客がいます。この『1日1500万人』という規模のリアル世界の顧客接点は、多くの企業にとって利用価値が高いのではないかと考えました。しかも店頭は顧客の購買モーメントに極めて近い顧客接点ですから、マーケティング上の価値が極めて高いと考えました」
こう語るのは、ゲート・ワン取締役COOの速水大剛氏。早速、店頭で来店客にクリエイティブを届けるのに有効なメディアとしてデジタルサイネージを選び、20年9月から少数の店舗に試験的に設置してみたところ、確かな効果が観測できたという。
「実証実験に協力してくださるクライアントを募って実際に広告を配信し、デジタルサイネージの設置店舗と非設置店舗のPOSデータや出口調査の結果データを比較してみました。その結果、売上や広告認知率、ブランド認知率などの向上効果がはっきり確認できたため、さらにこの取り組みを本格化することになりました」(速水氏)
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