「1日1500万人」の来客を生かす ファミマが“広告メディア”になる日:効果測定には「AIカメラ」(3/3 ページ)
コンビニ大手のファミリーマートは2021年9月、伊藤忠商事との共同出資により新会社「ゲート・ワン」を設立した。その目的は、ファミリーマート店頭にデジタルサイネージを新たに設置し、これを活用したメディア事業を立ち上げること。
デジタルサイネージ特有の「偶発性」を生かしたメディア戦略を
なお現時点では、ファミリーマートビジョンに配信するコンテンツの内容は「関東エリア向け」と「全国向け」の2つの区分に大きく分かれているが、将来的にはより細かなエリア分けを行い、それぞれのエリアに最適化した内容のコンテンツを配信する計画もあるという。
「例えば地域ごとの売れ筋商品に関連したコンテンツや広告を配信したり、その地域で広く知られる地元企業の広告を配信するといった施策も検討しています。
ただしファミリーマートビジョンの設置店舗数がまだ少ないうちは、エリアを細かく分けてもエリアごとの店舗数が少な過ぎるので、費用対効果はあまり期待できません。そのため今後設置店舗数が増えていけば、こうした施策も具体的に検討できるようになると考えています」(速水氏)
また現状のコンテンツ配信の仕組みは手作業に頼る部分が多いため、エリアごとに細かく配信内容を最適化するためには現状の仕組みをシステム化して、自動化・省力化を進めていく必要もあると速水氏は指摘する。
ちなみに中長期的には、ファミリーマート以外の企業とも連携したビジネス展開も視野に入れているという。デジタルサイネージのメディアとしてのリーチパワーを高めていくには、ファミリーマートの店頭だけに留まらず、外部の企業とも提携してさまざまな場所にデジタルサイネージを設置していき、リーチの“面”を広げていくのが有効だ。
それとともに、外部の企業とのデータ連携も深めていくことで、さらに高度なマーケティング施策が可能になると速水氏は述べる。
「外部のメディアとのデータ連携を深めることで、例えば『ファミリーマートに来る前にどこに寄ったのか?』『ファミリーマートを出た後にどこに立ち寄ったのか』といったリアル世界でのカスタマージャーニーを可視化できるようになります。このような仕組みを実現する上で、デジタルサイネージは極めて有効かつユニークなタッチポイントだと思います」
デジタル広告の世界では、ターゲティング技術が突き詰められていった結果、ユーザーの趣味嗜好に沿った広告“しか”提示されなくなったことのマイナス効果も一部では指摘されている。一方デジタルサイネージは、必ずしもユーザーの趣味嗜好に合致したコンテンツばかりが提示されるわけではないが、裏を返せば「偶然の出会い」が新たなビジネスチャンスをもたらす可能性がある。
「デジタルサイネージならではの『偶発性』を生かした新たな価値を追い求めながら、ファミリーマートの『来店客』『店舗オーナー』『広告主』の三者ともがメリットを享受できるようなメディア事業を育てていければと考えています」(速水氏)
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