一度は廃れた「焼き芋」がなぜブーム? ドンキは通年販売、コンビニ3社は“冷やし”を提案:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)
一度は廃れた「焼き芋」がブームになっている。ドンキやマルエツでは通年販売しており、コンビニ大手も冷やし焼き芋を提案する。専門店も増えており、関連するイベントも盛り上がっている。
専門店が果たした役割
焼き芋の品種のブランド化には、専門店が大きな役割を果たした。
現在あるような常設の焼き芋専門店の走りは、08年に銀座三越にオープンしたカドー・ドゥ・チャイモンだといわれる。デパチカにあったこの店では、鹿児島県種子島産の安納いもを主軸に販売。現在の焼き芋の主流となっている、甘みが強いねっとり系、またはしっとり系といわれる焼き芋の魅力を紹介し、イメージを変えた。残念ながら、この店は7年ほど前に閉店してしまったが、焼き芋のスイーツ化に道を開いた。
冷やし焼き芋を初めて商品化したといわれるのが、09年にオープンした愛知県碧南市のやきいも丸じゅんだ。同店は年間を通して20種類以上のサツマイモを扱い、焼き芋の食べ比べを推進した。
冷やし焼き芋「ひえひえ君」は、焼き芋を冷蔵庫で一晩寝かせて、より甘みを凝縮した商品だ。
都内に現存する、最古の常設焼き芋専門店は世田谷区豪徳寺の焼き芋専門店ふじで、同店は13年にオープンした。カドー・ドゥ・チャイモンでは1本1000円以上していた安納いもの焼き芋が、400円前後と半額以下になっていて、値段がかなりこなれている。立地も「招き猫」発祥の地といわれる豪徳寺参道の商店街にあり、観光のニーズが高い。
また、18年には都内の銀座7丁目のクラブ街に「銀座つぼやきいも」がオープン。この店では焼き芋をつぼ焼きにすることで差別化。クラブに勤める女性にも人気のようだ。1本の値段が896円とやや高いが、包装にもこだわっている。
つぼ焼いもと生乳でつくった「つぼ芋ラテ」という、独特なドリンクがある。
この他にも、徐々に専門店が増え、サツマイモを貯蔵する技術、焼き芋を焼く技術、冷やし芋をつくる技術もこの頃には確立されてきた。
そうした中で、20年2月には、さいたまスーパーアリーナ(さいたま市)のけやき広場で、第1回「さつまいも博」という4日間のイベントが開催され、5万人が来場。その中の企画として、18店が参加した「全国やきいもグランプリ」が行われた。来場者の投票によりグランプリを決めるもので、第1回は神戸の「志のもと」が選出された。
こうしたイベントの効果もあり、やきいもグランプリに出店した店を集めた催事が、百貨店で開催されるなど、焼き芋の注目度がアップした。
コロナ禍で、焼き芋が好調に推移した背景には、このような業界活性化イベントの効果もあった。
さつまいも博は22年も2月23〜27日の5日間、同所で開催。全国やきいもグランプリには20店が集結した。都内の新宿と立川に店舗を構える野菜レストラン「農家の台所」がグランプリに選ばれている。
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