伝説のヘヴィメタルバンド「LOUDNESS」を支えた事務所社長 米国進出の舞台裏を聞く:「世界への扉」を開いた(5/6 ページ)
デビューから41周年を迎えた日本のヘヴィメタルバンド「LOUDNESS(ラウドネス)」。所属事務所の社長に、ラウドネスをいかにしてマネジメントしてきたか、米国進出の経緯などについて聞く。
日本で大きな市場にならなかった理由
――日本にはある一定数のコアなヘヴィメタルファンがいます。世界各国にもマーケットはあるんですか?
全世界にはもちろんたくさん市場がありますし、そこまでニッチな存在でもないんですよね。海外では、メタルフェスティバルの規模も大きいですし、ドイツや北欧にも大きなフェスは多くあります。家族でキャンプをしながら、アイアン・メイデン(世界を代表するヘヴィメタルバンド)のライブを、親子三世代で楽しみに来ていたりしています。
――日本ではヘヴィメタルはメインストリームのジャンルにはなれなかったかもしれないですね。やはりポップスが強かったと思いますが、何か決定的な理由はあるんですか?
いえ、80年代はメタルも大変人気があって、女性ファンもいっぱいいたと思いますよ。ただ、日本にはスターがいなかったのかもしれません。全盛期のボン・ジョヴィ(世界的なハードロックバンド)のような圧倒的なロック・スターがいないと駄目だったんですかね。
一方で、ジャパメタからの影響も大きいであろうヴィジュアル系バンドには、根強いファンはいっぱいいます。彼らはCDが一番売れていた時代に、日本のポップスという意味でヒット曲を飛ばしていて、お茶の間からの認知を得ています。
――日本では、流れとしてヴィジュアル系に行ったということなんですかね?
それもあるかもしれませんが、海外では、X JAPANもメタルとして見ているファンもいますし、DIR EN GREYなどは欧州有数のメタルフェスのヴァッケン・オープン・エアにも数回出ていて、ヘヴィメタルとして認知されています。加えてアニソンの世界でも、歪(ひず)んだギター音のルーツは確実に生きているように思います。
――ただ、メタルの世界では次のスターが出てこなかった?
そうですね。それが出てくれば変わるのかもしれません。やっぱりギターを弾くのがかっこいいと思わせるような次世代のスター。今は、ちょっと勉強してパソコンの使い手になって、歌のうまい子を連れてきて歌わせたり、それが無理ならボーカロイドをしてみたり……というジャンルが音楽シーンの主流かもしれないですね。
だから音楽系の専門学校でも、ギターを専攻するような学科ではなく、DTM(デスクトップミュージック)のような学科にしか生徒が集まらないそうです。
――そして隅田さんは2014年に起業します。起業した時は、どんな状況だったんですか。
レコード会社で勤めた後、音楽事務所に5年ほど在籍しました。海外に音楽を届けるプロジェクトの会議に参加していて、その会議でランティス(当時)の井上俊次社長とよくご一緒していました。
ちょうど私が、その会社を辞めるときに、井上社長から「一緒にできればと思うことがあるんだけど」と誘われたのがきっかけですかね。
「ラウドネスをもう一度海外に」ということでしたが、当時のマネジメントはあまりうまく機能していなかったようで、メンバーとも話し合いカタナミュージックを立ち上げることになりました。事務所は自宅で、電話とパソコンが一つずつ。メンバー以外の社員も私一人。固定費はミニマムなスタートでしたが、結果的にそれが奏功し、その後のコロナ禍も乗り切れているようにも思います。
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