老舗が続々廃業! 「和菓子店の危機」がここにきて深刻なワケ:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
老舗和菓子店が相次いで廃業している。地元の人に長く愛されてきた和菓子店が、なぜ閉店しているのだろうか。原因は「新型コロナの感染拡大」「手土産需要の減少」だけでなく……。
人口減少が影響か
では、一体何が原因なのか。筆者は「人口減少が加速した」ことが、老舗和菓子店廃業の背中を押していると考えている。
総務省によれば、21年10月1日時点の日本の総人口は1億2550万2000人。前年比で64万4000人減っていて、1950年以降で過去最大の落ち込みぶりなのだ。また、人口動態統計速報(令和3年12月分)で見ても、21年は145万2289人という戦後最多の死亡数となっている。これは沖縄県の総人口(約146万人)に匹敵する。
この145万人の中には高齢者が多くを占めている。それはつまり昨年、和菓子店を支えてきた「ヘビーユーザー」が過去最悪レベルで、激減していたということでもある。全国の老舗が相次いで廃業に追い込まれるのも納得ではないだろうか。
このような未曾有(みぞう)の人口激減の影響を老舗和菓子店はモロに受ける。典型的な「地域密着型中小零細企業」が多いからだ。
皆さんも地元で長く愛される和菓子店を思い描いていただきたい。ほとんどが家族経営や従業員が数名程度、大きなところでも100人程度という規模ではないだろうか。
この1年で廃業に追い込まれた老舗もそうだ。紀の国屋は23店舗展開しているということもあって162人だが、神戸の菊水総本店も13人(公式Webサイト)だし、出雲の高田屋にいたっては、「10年ほど前から職人を雇うのをやめ、夫婦で切り盛りしていた」(前出・読売新聞)という。
このような典型的な地域密着型中小企業は、どうしても人口減少に弱い。そこで働いている人たちの能力うんぬんの話ではなく、組織が構造的にモノやサービスの価値を上げていくことが難しいからだ。
人口が激減すれば当然、消費者も激減する。そういう国で企業が生き残るのは、モノやサービスの「価値」を上げていくしかない。極端な話、毎月100人いた客が80人に減るとしたら、1人当たりの単価を上げていくしかない。といっても、これまでと同じ商品やサービスで価格だけ上げれば客からそっぽを向かれてしまうので、新たな付加価値をのっけていくしかない。新たなビジネスモデルを構築したり、海外に積極的に進出したりして、外国人など新客を開拓することも含まれる。
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