老舗が続々廃業! 「和菓子店の危機」がここにきて深刻なワケ:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
老舗和菓子店が相次いで廃業している。地元の人に長く愛されてきた和菓子店が、なぜ閉店しているのだろうか。原因は「新型コロナの感染拡大」「手土産需要の減少」だけでなく……。
「新しい価値」を創造
和菓子店でいえば、時代を捉えたような革新的な製品開発や海外に進出して外国人に魅力を伝えることなどだが、残念ながらこれは「街の小さな老舗和菓子屋」にはかなりハードルが高い。会社の規模が小さいので、人もおカネも日常業務をまわすだけで精一杯で、とても新規事業や海外進出などをする余裕がないのだ。
どうにかがんばっても、ECサイトを立ち上げるくらいなのでメインはどうしても地域の常連客に依存する。しかし、日本は急速な人口減少でその地域の客がガクンと減っている。依存しているぶん、ダメージも甚大だ。だから相次いで廃業をする。
このようなシビアな現実があるということは、「街の小さな老舗和菓子屋」と対極にある「規模の大きな老舗和菓子企業」が未曾有の人口減少を乗り越えるため、次々と「新しい価値」をつくり出していることからも明らかだ。
例えば、1946年創業の創作和菓子「源吉兆庵」は、グループ会社も含めて2500人も従業員がいる(公式Webサイト)。岡山の個人商店から順調に規模拡大を果たし、現在は国内で150店舗。93年にシンガポールを皮切りに海外進出も加速して今や米国、英国、中国などに約30店舗を展開している。
ここまで規模が大きいので、定番の和菓子以外にも次々と革新的な商品を生み出せる。岡山産のマスカットを使用した「陸乃宝珠」が人気だが、最近では国内外で活躍する和菓子作家、坂本紫穗氏とコラボした商品なども開発している。
また、東京・亀戸で1805年創業の「船橋屋」も、従業員300人という規模で次々と新しい価値を生み出す老舗として有名だ。
関西のくず餅と異なり、発酵させた小麦澱粉を原料とする「元祖くず餅」が江戸時代から続く看板商品なのだが、それだけにとどまらず「くず餅プリン」など時代にマッチした商品を次々と開発、広尾や表参道におしゃれなカフェも展開している。
さらに、くず餅の健康機能にも着目して、研究機関と協力してエビデンスをそろえて最近では、「飲むくず餅乳酸菌」というサプリメントやドリンクも開発している。まさしく和菓子というジャンルを超えて、新しい価値を創造しているのだ。
関連記事
- “売れない魚”の寿司が、なぜ20年も売れ続けているのか
魚のサイズが小さかったり、見た目が悪かったり――。さまざまな理由で市場に出荷されない「未利用魚」を積極的に仕入れ、宅配寿司のネタにしているところがある。しかも、20年も売れ続けていて……。 - 東大合格者は毎年500人以上! 鉄緑会「公式ノート」が地味にスゴい
東大受験専門塾の看板を掲げる「鉄緑会」が、初の公式ノートを発売した。パッと見たところ「普通のノート」に感じるが、どのような工夫が施されているのか。開発に携わった、KADOKAWAの担当者に話を聞いたところ……。 - ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.