老舗が続々廃業! 「和菓子店の危機」がここにきて深刻なワケ:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
老舗和菓子店が相次いで廃業している。地元の人に長く愛されてきた和菓子店が、なぜ閉店しているのだろうか。原因は「新型コロナの感染拡大」「手土産需要の減少」だけでなく……。
「新しい価値」をつくり出せていない
このような老舗企業と比べると、残念ながら廃業した和菓子店は新しい価値を生み出しているとは言い難い。例えば、紀の国屋のWebサイトを見ると、看板商品として「相国最中」「あわ大福」以外も定番の和菓子がたくさん並んでいる。ようかん、芋金時、さくら餅、くるみ饅頭、いちご大福……どれも味や品質は素晴らしいのだろうが、和菓子店として極めてオーソドックスな品ぞろえだ。「源吉兆庵」や「船橋屋」のように、時代を捉えたような商品はない。
しかも、公式Webサイトで掲載されている商品写真は画素が粗く、ネットやSNSの情報発信にもあまり力を入れていないことが一目瞭然だ。「源吉兆庵」や「船橋屋」はシズル感のある写真を多用して、WebサイトもECサイトも充実、SNSでの情報発信にもかなり力を入れている。
誤解なきように断っておくが、紀の国屋がサボっていたとか、ダメだなどと言いたいわけではない。新商品を開発するのにも、WebサイトやSNSで情報発信するにしても人とカネが必要になる。これまでの業務を続けるだけで精一杯で、新しい価値をつくり出す「余裕」がなかったというだけだ。
新しい価値をつくり出せない企業は「現状維持」で食っていくしかない。常連客に、これまでの商品・サービスを提供していくのだ。そんな現状維持型ビジネスの天敵が人口減少だ。消費者の絶対数がガクンと減るので、常連客もガクンと減る。これまでの商品・サービスを提供していても疲弊していくだけなので、残された道は廃業するしかない。
それが最も分かりやすい形で表面化しているのが、昨年から相次いでいる老舗和菓子店の閉店ではないのか。
この「和菓子店の危機」は、これから本格的に到来する「日本の中小企業の危機」のプロローグに過ぎないと筆者は考えている。
日本企業の99.7%は中小零細企業だ。人口が減少するので、生産性を上げなくてはジリ貧だ。生産性を上げるのに、テレワークや在宅勤務などで仕事の「効率」を上げてもしょうがない。輸出やイノベーション、さらには賃上げなどでその会社が創出する「価値」を上げていかなければいけない。
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