老舗が続々廃業! 「和菓子店の危機」がここにきて深刻なワケ:スピン経済の歩き方(6/7 ページ)
老舗和菓子店が相次いで廃業している。地元の人に長く愛されてきた和菓子店が、なぜ閉店しているのだろうか。原因は「新型コロナの感染拡大」「手土産需要の減少」だけでなく……。
中小零細企業の「おごり」
これまで見てきたように、小さな会社のままでは資本的にもマンパワー的にも新しい価値をつくりだすことが難しい。というわけで、事業拡大やM&Aで会社の規模を大きくすることが重要なのだが、なぜか日本の中小企業経営者はそれに反対をする人が多い。
小さいままだと国から手厚く保護されるなどの「大人の事情」もあるが、経営者の美学的なところで言えば、「日本の中小企業は世界一の技術なので、小さいままでも十分戦える」という「おごり」が強いことがある。
これは和菓子店も同じだ。先ほど40年前から「和菓子離れ」の危機がささやかれていたことを紹介したが、もっと以前からこのままでは欧米の洋菓子に負けてしまう危機感があった。そこで1960年代から盛んに海外進出を試みたが、結果はいまいちだった。一部の親日家は絶賛したが、フランスのシュークリームなどのように食文化として輸出できるレベルではなかった。
これは欧米では豆は主食なので、「あんこ」などがそれほどササらなかったと説明されているが、一番大きいのは過度な「技術信仰」ではないかと思う。『読売新聞』(1961年10月5日)には当時、ハワイで大々的なPRイベントを催した和菓子店のこんな自信満々の声が紹介されている。
「日本独特の”芸術菓子”が人気を呼ぶだろう」
「全然し好が合わないという食品は、国が違っても3割くらい。味つけさえ少しくふうすれば売れる。現に、ルーズベルト夫人など大のヨウカン・ファンだ」
日本人特有の高い技術力が世界に認められないわけがない。ここさえしっかりと抑えておけばビジネスはうまくいく――。そんな「技術至上主義」ともいう思い込みが、日本の自動車、家電、半導体、携帯電話、アニメなどさまざまな分野の「衰退」を招いている側面があることは、もはや異論がないのではないか。
関連記事
- “売れない魚”の寿司が、なぜ20年も売れ続けているのか
魚のサイズが小さかったり、見た目が悪かったり――。さまざまな理由で市場に出荷されない「未利用魚」を積極的に仕入れ、宅配寿司のネタにしているところがある。しかも、20年も売れ続けていて……。 - 東大合格者は毎年500人以上! 鉄緑会「公式ノート」が地味にスゴい
東大受験専門塾の看板を掲げる「鉄緑会」が、初の公式ノートを発売した。パッと見たところ「普通のノート」に感じるが、どのような工夫が施されているのか。開発に携わった、KADOKAWAの担当者に話を聞いたところ……。 - ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.