「サーモン」輸入にウクライナ侵攻の影響 それでもスシローやくら寿司が大きく慌てていない理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)
ロシアのウクライナ侵攻がサーモンの輸入に影響を与えている。特に、ノルウェーからの空輸便がロシア上空を通過できなくなっている。一方で、スシローやくら寿司などがサーモン不足に陥っていない理由とは?
ご当地サーモンに注目
国内ご当地サーモンの事情はどうだろう。
1977年、世界で初めて銀鮭(ギンザケ)の養殖に成功し、国内養殖シェアの9割を占める宮城県漁業協同組合によれば、養殖銀鮭の5月20日における価格は1キロあたり704円。昨年の596円より2割近く上がっている。それだけ引き合いが強いということだ。
宮城県の養殖銀鮭は生食できる「みやぎサーモン」としてブランド化されている。
「国産銀鮭の価格は、外国産銀鮭の値段が決まってから、決められる。今年は輸入シェアが大きいチリ産の価格が高くなっているから、国産も上がっている」(宮城県漁業協同組合)。
銀鮭は寒冷な北太平洋に生息し、ロシア、カナダ、米国西海岸が産地。天然では、日本には生息していない。日本産の銀鮭は養殖。南半球にあるチリの銀鮭も養殖である。
それにしても、銀鮭の養殖技術を世界で初めて確立していながら、輸入品に価格決定権を握られてしまっている現状は、日本の漁業や、食料安全保障上好ましいことだろうか。
長野県のご当地サーモン「信州サーモン」はどうか。「高級食材として販売してきたが、ノルウェー産の価格が上がってきて、それなら信州サーモンを扱ってみようかという動きがある」と、信州サーモン振興協議会(長野県安曇野市)は現況を述べた。
ただし、飲食店やホテル向けの需要はコロナ禍のため低調。十分に育った養殖池の魚を出荷するために、学校給食として提供するなど、売りさばくのに苦労していたら、ロシアのウクライナ侵攻が起こった。信州サーモンは育つのに2〜3年かかるので、引き合いが増えても、急には対処できないジレンマがあるという。
信州サーモンは、長野県水産試験場がニジマスのメスとブラウントラウトのオスを交配して開発した。年間40万尾の稚魚を生産する。なお、同協議会が結成されて12年になる。
国内のご当地サーモンには追い風が吹いている。ノルウェー産にも劣らないか、それ以上と思える品質のサーモンもある。しかし、消費者にはまだよく知られていない。ご当地サーモンの産地が結束して、販売促進活動をしていくのも必要ではないだろうか。
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