東京・銀座の「GINZA SIX」内に位置する「銀座 蔦屋書店」は、書家・財前謙氏の作品展「平仮名 ひらがな」を6月17日まで開催する。スマートフォンの普及で文字を書く機会が少なくなった今、日本文化の重要な芸術の一つでもある「書」の魅力をあらためて感じられる場を提供する。
本を介してアートと日本文化と暮らしをつなぎ、「アートのある暮らし」を提案してきた同店は、「日本刀」「現代陶芸」「仏像」なども日本独自の美術品と捉え、多くの企画を実施してきた。今回は、組織や団体に属することなく、「書」の根源的な意味を探り続ける書家である財前氏の作品を取り上げ、新規の顧客開拓を狙う。
同店でArt & Craftを担当する佐藤昇一さんに狙いを聞いた。
「銀座でアートと日本文化を発信するためにさまざまな企画を提案しています。これまでの企画を通して現代アートの分野では応援してくれるお客さまを少しずつ獲得することができました。今回は書の作品展を開催することによって、日本文化においても新規のお客さまを開拓したいと考えております」
財前氏は、1963年大分県生まれ。中学生のときに中国・唐時代の書家である欧陽詢の「九成宮醴泉銘」に魅了された。早稲田大学在学中に「独往の書家」と呼ばれる会津八一に出会うと、「書道は自分で究めるものだ」と自覚したという(難病と生きる「孤高の書道家」――スマホ時代に問う「手書きの意味」参照)。
作品展では財前氏の探究の成果として新作16点を展示する。平仮名で『古今和歌集』を綴った『古今和歌集仮名序』は275万円(店頭販売価格、以下税込)、『枕草子』をもとにした『清涼殿』は55万円に設定した。
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