削らなくても16キロ書ける! 「芯まで金属のペン」開発秘話を聞いた:3分インタビュー(2/3 ページ)
ちょっと気になる商品が登場する。芯が金属でできているのに、文字を書いたり、消したりすることができるペンだ。その名は「metacil(メタシル)」。発売前にもかかわらず、ネット上で話題になっているが、どのような特徴があるのか。開発者に聞いてきた。
黒鉛の量
――メタシルの開発はどのように進んだのでしょうか?
大杉: 上司に「つくってみたいです」と伝えて、試しにつくってみることに。しかし、そこから困難が待ち受けていました。黒鉛の量をどのくらいにすればいいのか、その落としどころが難しかったんですよね。
先ほどお話したように、従来のメタルペンだと、金属100%なので、ものすごく長い距離を書くことができますが(「半永久に書ける」とうたっているモノもある)、文字が薄い。逆に、黒鉛を増やせば増やすほど、文字の色は濃くなりますが、そのぶん書ける距離が短くなる。
最初の試作品を使ってみたところ、黒鉛の量が少なかったようで、文字の色が薄くて「これは使えないな」と思いました。次に、黒鉛の量を増やしたところ、文字の色は濃くなったものの、書ける距離が短かったので、「これも使えないな」と。
そんな感じで、「ちょっと薄いな」「もうちょっと濃くできないかな」「書ける距離が短いな」「もうちょっと長く書けないかな」といったやりとりを繰り返して、いまの形に落ち着きました。濃さは、2H相当で、削らずに16キロほど書くことができます。
開発担当のメンバーが、コピー用紙に線を何本も書きまして。「往復で〇〇センチ、それを〇〇本書けたので、16キロ」と言っていました。
――今回の濃さは2Hですが、黒鉛の量を調節することで、HやBにすることができるわけですね。で、商品は完成したわけですか?
大杉: いえいえ。黒鉛の量は決まったのですが、次に価格の問題がありました。従来のメタルペンは高くて、1万円前後のモノが多いんですよね。メタシルは中学生や高校生を中心に使ってもらいたいので、1本1000円以下にすることはできないかと考えていました。
他社製品を見ると、軸の部分に金属と木を合わせるなどしている。こうしたことをせずに、シンプルな構造にすればコストを抑えることができるのではないかと思いました。高級感を打ち出すことは大切なことですが、それをそのまま価格に反映させることはできません。このほかにも抑えるところはできるだけ抑えて、必要なところにはコストをかけて。こうした見直しをしたことで、1本990円で販売できるようになりました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
東大合格者は毎年500人以上! 鉄緑会「公式ノート」が地味にスゴい
東大受験専門塾の看板を掲げる「鉄緑会」が、初の公式ノートを発売した。パッと見たところ「普通のノート」に感じるが、どのような工夫が施されているのか。開発に携わった、KADOKAWAの担当者に話を聞いたところ……。
えっ、1泊100万円の部屋が好調なの? 「稼働率が70%を超えた」衝撃
盛岡駅からクルマで1時間ほどのところにできた、高級ホテルが話題になっている。ホテル名は「ANAインターコンチネンタル安比高原リゾート」。2月にオープンしたところ、1泊100万円もする部屋が人気を集めているのだ。その理由を取材したところ……。
丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
またまた炎上した。丸亀製麺が讃岐うどんの本場・丸亀市と全く関係がないことである。このネタは何度も繰り返しているが、運営元のトリドールホールディングスはどのように考えているのだろうか。筆者の窪田氏は「讃岐うどんの看板を下ろしたほうがいい」という。なぜなら……。
ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。
CDが苦戦しているのに、なぜ曲を取り込む「ラクレコ」は売れているのか
CD市場が苦戦している。売り上げが減少しているわけだが、CDをスマホに取り込むアイテムが登場し、人気を集めている。商品名は「ラクレコ」(バッファロー)。なぜ売れているのか調べたところ、3つの要因があって……。

