「天下一品」が大好きな小学生の折り紙は、なぜ社長に届いたのか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
ラーメンチェーン「天下一品」の店舗に、男子小学生から折り紙が届いた。その男の子は病気と戦っていて、大好きな天下一品に作品を送ったというのだ。同社の社長は小学生と面会する予定だが、この話をどのように受け止めた人が多いだろうか。SNS上でも話題になっていて……。
天下一品のこれから
ドラッカーは組織をマネジメントしていく真髄は、「フィードバック」だという結論に至った。組織が外の社会から情報を入手して、顧客と対話をしていくことで、自分たちの目的や存在意義を確認することができる。
このフィードバックが天下一品という会社は、うまく機能しているのかもしれない。だから、50年もファンから愛されてきたし、お店に届けられた子どものプレゼントも社長に届く。
日本人は「職人気質」が好きだ。「作り手のこだわり」を理解して、それを愛する人たちがファンであり、そういうファンをいかに囲い込むかを「ファンマーケティング」と呼び、「客が店を選ぶのではなく、店が客を選ぶことが大切」なんてことを主張するマーケティングの専門家もいる。
確かにそういう手法で成功している飲食店は珍しくない。ただ、一方で、社会と対話しない閉鎖的な組織なので、何かしらの問題が起きた際に改善や、自浄作用が働かないという問題もある。また、「生娘シャブ漬け戦略」にも通じる、客を小馬鹿にしたような上から目線の印象を与えてしまうリスクもある。
なかなか悩ましい問題だが、このひとつの解決策が、天下一品に隠れている気がしてならない。
あの濃厚な「こってりスープ」は好き嫌いもあるので、「客を選んでいる」という側面もある。一方で、これまで見てきたようにファンの声に耳を傾けて、「店を選んでもらう」ための努力も続けている。店舗によっては、ファンの意見を反映させたオリジナルメニューも開発している。
ラーメン業界が長く課題としてきた「職人気質」と「ファンサービス」という相反する2つを両立させることができるのか。天下一品のこれからに注目したい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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