「天下一品」が大好きな小学生の折り紙は、なぜ社長に届いたのか:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
ラーメンチェーン「天下一品」の店舗に、男子小学生から折り紙が届いた。その男の子は病気と戦っていて、大好きな天下一品に作品を送ったというのだ。同社の社長は小学生と面会する予定だが、この話をどのように受け止めた人が多いだろうか。SNS上でも話題になっていて……。
「あっさりスープ」の誕生ストーリー
さて、このように話を聞くと、なぜ天下一品はここまでファンマーケティングに力を入れているのかと不思議になるだろう。筆者は、やはり創業者・木村勉氏の「ファンの言葉に耳を傾ける」という「イズム」が息子である一仁社長に、しっかりと受け継がれているからではないかと思う。
それを象徴するのが、天下一品の代名詞である「こってりスープ」ともうひとつの柱である「あっさりスープ」の誕生ストーリーだ。
1976年、京都・北白川で創業した天下一品は、唯一無二の「こってりスープ」で瞬く間に人気となり、着実にファンを増やしていた。しかし、あるとき、高齢男性からこんなことを言われる。
「味が濃くて食べられない」
実はこのスープは木村勉氏が3年9カ月間、試行錯誤を重ねて開発したものだった。職人気質のラーメン店だったら、「もう来ていただかなくて結構です」と追い出されるところだが、木村氏はこの言葉をきっかけに、同じく定番となった「あっさりスープ」を開発した。「多くの人に天下一品のラーメンを食べてほしい」(天下一品Walker)という気持ちからだ。
現在、勉氏は会長となって、経営は息子の一仁氏に譲っており、天一食品グループが経営する温泉レジャー施設「スパリゾート雄琴 あがりゃんせ」にいるというが、そこでも「ファンの言葉に耳を傾ける」ことは続けているようだ。
『わたしは会長になってからほぼ毎日この『あがりゃんせ』におりますけど、ここにおるといろんなお客さんの声が聞こえるんですわ。あそこの店のスープは薄いだぬるいだ。70歳超えた人が『屋台のころからしょっちゅう食べにいってまっせ』とか言う人もおる』(FRIDAY 2021年11月10日)
誰にも真似ができないと言われる独特のスープをつくったことで、「ラーメン界のカリスマ」と呼ばれる御歳87歳が、いまだにこうやってファンの言葉に耳を傾けているのだ。その背中を見て育ち、バトンを受け継いだ息子も同じことを大事にしていると考えるのが、自然ではないか。
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