ユニクロの「フリース1000円値上げ」は正しい、なるほどの理由:スピン経済の歩き方(1/7 ページ)
ユニクロがネット上で叩かれている。「秋冬モノで1000円前後の値上げを予定している」と発表したところ、「高すぎる!」などと厳しい声が相次いでいるのだ。同社の値上げは“間違って”いるのだろうか。いや、実はそんなことはなく……。
秋冬モノで1000円前後の値上げを予定している、と発表したユニクロが叩かれている。
ネットやSNSでは「これでユニクロに行く理由がなくなった」などと厳しい声が多く寄せられているのだ。また、以前からSNS上ではたびたび指摘されている、「シンプルなデザインばかりで高齢者やオシャレに興味がない人向け」という批判も蒸し返され、「ダサいのに高すぎるを目指すユニクロのマーケティング戦略」などとディスられているのだ。
「ダサい」はさておき、「高い」という批判はユニクロ的に看過できないリスクだ。ご存じのように、日本人は「安さ」をアピールしていた企業が、高級路線に転じると、まるで犯罪をおかした者のように執拗(しつよう)に叩き続けるという陰湿なカルチャーがある。
分かりやすいのが、マクドナルドだ。かつて「65円バーガー」など低価格路線で人気を博したあと、80円程度に値上げするなど高級化路線へと舵(かじ)を切ったが、「ハンバーガーが80円? そんなボッタクリあり得ない」などと炎上して売り上げも激減、わずか半年で値上げを撤回して、さらに安い「59円バーガー」にしたことがあった。
ユニクロもこれと同じことが起きる可能性は、ゼロではない。秋冬モノが実際に店頭に並ぶと「こんなシンプルなフリースが2990円? あり得ない!」「企業努力が足りない! 社員の給料を削ってでも、価格を据え置くのが商売の基本だろ」なんて感じで陰湿なネガキャンが起きて、客足にも悪影響を及ぼすのだ。
ただ、そういうリスクはさておき、ユニクロの「フリース1000円値上げ」は、人口減少社会に対応していくという点では何も間違っていない。むしろ、「なるほど」と納得するほど理にかなった戦略なのだ。
これからの日本では、「あらゆる世代に安くて質のいいモノを提供して、幅広い支持を得る」というビジネスモデルに固執し続けていても、破滅しか待っていない。日本国内の消費者の絶対数が激減していくことに加えて、中でも若者の数が急速に減って、加速度的に貧しくなっていくからだ。
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