ユニクロの「フリース1000円値上げ」は正しい、なるほどの理由:スピン経済の歩き方(2/7 ページ)
ユニクロがネット上で叩かれている。「秋冬モノで1000円前後の値上げを予定している」と発表したところ、「高すぎる!」などと厳しい声が相次いでいるのだ。同社の値上げは“間違って”いるのだろうか。いや、実はそんなことはなく……。
若者が貧しくなる
移民を受け入れない日本で消費が急速に冷え込むことは、今さら説明の必要もないだろう。これからの日本は毎年、鳥取県の人口と同じくらいの人が減っていく。ただ、「労働人口」の減少はロボットやAIでカバーできるし、外国人の技能実習生を酷使し続ければ、どうにかゴマかすことができる。
しかし、「消費人口」は無理だ。ロボットやAIは食事もしないし旅行もしない。日本中にたくさんいる技能実習生は、日本人が逃げ出すような低賃金でコキ使われていることに加えて、本国の家族への仕送りや、ブローカーへの借金返済などで極貧の生活を送って消費どころではない。
最後の希望が、「移民を受け入れることなく国内消費者を増やす」というウルトラCが実現できるインバウンドだったが、コロナで木っ端微塵(みじん)に砕け散った。新規感染者数が増えるたび、「マスクをしない外国人は出てけ」なんて閉鎖的な国では、しばらくこの方面に期待することは難しい。
となると、われわれに残されたのは、国内の消費が人口減少にともなってじわじわと縮小することを受け入れて生きていく道だ。その中でも急速にしぼんでいくのが若者の消費だ。
これは最近、政府が出した「最近の若者は草食系でデートをしなくなった」なんて与太話などは一切関係なく、シンプルに若者の絶対数が減って、貧しくなっていくことが大きい。厚生労働省の「人口構造の急速の変化」を見れば分かりやすいが、8年後の2030年、日本人の31.2%、およそ3分の1が65歳以上になる。(参照リンク)
15〜64歳は19年から632万人も減少して、中でもガクンと減るのが30代以下だ。人口ピラミッドでは30年に59〜56歳の団塊ジュニア世代(1971〜74年生まれ)が山のピークなので、20代あたりが最も少なくなってしまうのだ。
そして、このような「いびつな人口構成」になると当然、若者は今よりも貧しくなっていく。
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