ユニクロの「フリース1000円値上げ」は正しい、なるほどの理由:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
ユニクロがネット上で叩かれている。「秋冬モノで1000円前後の値上げを予定している」と発表したところ、「高すぎる!」などと厳しい声が相次いでいるのだ。同社の値上げは“間違って”いるのだろうか。いや、実はそんなことはなく……。
常識が通用しなくなる
2010年に生産労働人口約2.8人で高齢者1人を扶養していたが、30年になるとこれが約1.8人で1人を扶養することになる。ただでさえ負担が重くなっていくところに、日本は年功序列で若者は低賃金という常識がビタッと定着しているので、若者からすればもはや社会保障負担のために働いているような感じになってしまう。
もちろん、これも日本政府が諸外国のように最低賃金を引き上げて、賃上げの流れを後押ししたり、ベーシックインカムを導入したりすれば解決できる話なのだが、「賃上げしてくれた企業は税制優遇します」なんてヌルい政策しかできない日本では夢のまた夢の話だろう。
つまり、30年の若者は、10年の若者に比べてファッションや旅行などの消費をする余裕が格段になくなっている可能性が高いのだ。
さて、このような近未来がほぼ確定している中で、これまでのような「あらゆる世代に安くて質のいいモノを提供して、幅広い支持を得る」というファストファッションが通用するだろうか。
通用するわけがない。消費者の数は減っているので、大量生産、大量消費を前提としたビジネスモデルはガラガラと崩れていく。特に20〜30代は数がガクンと減って貧しくなるので、この客層がカバーしていた売り上げはゴッソリと削られていくのだ。
では、このような事態を避けるためにはどうすべきか。
まずやらなくてはいけないのが「価値向上」だ。日本国内の消費者の数はもう二度と増えていかないので、企業が成長を続けていくには単価を上げていくしかない。といっても、ただ価格を上げるだけでは先ほど申し上げたような消費者からバッシングを受けるので、これまでのファッションに新たな価値を乗っけていくしかない。
そして、それと並行してやらなければいけないのは、「年齢層の引き上げ」である。これまであらゆる世代に向けていたと言いながらも、なんだかんだ言って、やはり若者をメインにとらえていた部分はある。その発想をガラリと変えて、日本人の3分の1を占める65歳以上や、人口ピラミッドの山である50代後半が好みそうなシンプルで無難なデザインのものを多くしていくのである。
関連記事
- ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか
どうやら「高級食パン」のブームが終わるようだ。最近、さまざまなメディアがこのように報じているわけだが、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのか。その背景には、2つの理由があって……。 - 削らなくても16キロ書ける! 「芯まで金属のペン」開発秘話を聞いた
ちょっと気になる商品が登場する。芯が金属でできているのに、文字を書いたり、消したりすることができるペンだ。その名は「metacil(メタシル)」。発売前にもかかわらず、ネット上で話題になっているが、どのような特徴があるのか。開発者に聞いてきた。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - “売れない魚”の寿司が、なぜ20年も売れ続けているのか
魚のサイズが小さかったり、見た目が悪かったり――。さまざまな理由で市場に出荷されない「未利用魚」を積極的に仕入れ、宅配寿司のネタにしているところがある。しかも、20年も売れ続けていて……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.