“限界地銀“を食い物に? SBI「地方創生トライアングル戦略」の中身の薄さ:「第4のメガバンク」構想の行方は(3/4 ページ)
SBIホールディングスの北尾吉孝社長が5月の決算発表の席上、新生買収の大きな目的でもある“限界地銀”再生策としての「地方創生トライアングル戦略」を公表した。内容とともに、浮き彫りになったSBIの思惑を考察する。
SBIの地銀支援力、相場の恩恵受けてただけ?
SBIの支援提携地銀は、きらやか銀を金額的筆頭に、提携9行中7行までが22年3月決算で多額の有価証券評価損を計上しています。21年に北尾社長が声を大にして語っていた、SBIの地銀支援力は、結局のところ相場が右肩上がりを続けていた恩恵に過ぎなかったのではないかと思えるわけなのです。
SBI支援地銀の軒並みの評価損拡大で公的資金申請連鎖が始まりそうな現況に、同社に地銀支援のお墨付きを与え、新生銀行の経営権取得までも“黙認”した金融庁も、穏やかならざる面持ちでいるのではないでしょうか。
SBIは有価証券販売仲介で自社の収益にはプラスを生みながらも、提携地銀の力になっているとはおよそ言い難い状況下にあり、金融庁の手前もあって新生銀行の地銀支援への活用を早期に形にするという姿勢を示す必要があったのでしょう。
北尾社長がこのタイミングで公に登場する機会となった同社の決算会見で、「地方創生トライアングル戦略」を生煮え状態でも公表せざるを得なかった裏には、このような事情があったと考えられます。
“限界地銀”対策に無策の金融庁
当の金融庁についても、“限界地銀”対策に関する無策ぶりはどうなのか、と頭を傾げたくなる部分があります。今回きらやか銀行が申請する公的資金は、従来の最長返済期限15年という縛りもなく申請時の経営責任も問わないという、これまでには考えられなかったほど緩い条件下での資本注入となります。
これは表向きコロナ禍で地方経済が疲弊する中で地銀に資本増強を促し、地元への必要な資金供給に支障を生まないためとされていますが、今回のようなコロナ禍の影響というよりは自己責任での経営悪化にも同様の対応でいいのか、疑問符が付くところではないでしょうか。
返済期限も責任も問われないとなれば、当然経営のモラルハザードが懸念されるわけであり、再生に向けた“限界地銀”の緊張感に緩みが出るのではないかと思うところです。それより何より、言ってみれば「ある時払いの催促なし」の資本注入は「タダもらい」も同然なわけで、取引先には融資金の取り立てを厳しく行う銀行に対してこんな姿勢でいいのかと、思わず突っ込みたくもなるところです。はからずも、地銀再生に向け対処療法に終始する金融庁の無策さを示す形になったのではないでしょうか。
金融庁はこれまで、合併や経営統合をした地銀に対して補助金を出すという改正金融機能強化法の施行や、規制に縛られていた地銀の取扱業務の拡大を認める銀行法の改正などの地銀再生施策を講じてきてはいるものの、大きな成果を見出すには至っていません。
そのような中で、名門新生銀行の買収を、証券業界の新興勢力で“暴れ馬”のSBIに認めたのは、地銀救済を買って出ていたSBIを逃がさないための苦し紛れの策であったともとれます。
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