スシローは「おとり広告」問題の本質を理解しているか おわび文書に“違和感”を覚えたワケ:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
「スシロー」のおとり広告問題。筆者はスシロー運営会社の体質が、今回の問題と大きく影響しているのではないかと分析する。どういうことかというと……。
不動産業界ではどんな問題があるのか
おとり広告で問題になった他業界の事例を見てみよう。
おとり広告は、先述したように不動産業界では特に問題視されている。不動産のポータルサイトなどに、相場よりも安価な価格・賃料の物件を掲載しておいて、来店した人に、成約済みだからと、別の物件を勧めるといったものだ。
首都圏を中心に不動産業者が加盟する「首都圏不動産公正取引協議会」によれば、「実際には悪意あるケースより、成約した物件をサイト上で消し忘れていることが多い」とのこと。不動産業者に悪意がなくても、架空の物件を使って宣伝していると消費者には映る。住む気満々で期待に胸膨らませて来店した顧客に、「その物件は売れた。借りられた」と説明したのでは、だまされたと怒る人が出てくる。これが、おとり広告の実態で、うっかり成約済みの土地・建物を掲載してしまっただけだという気持ちの問題で免責されないのだ。
同協議会の20年度の事業報告によれば、おとり広告の相談件数は169件あり、全体の2.3%を占めている。また、違約金追徴に至った事案19件のうち、契約済みにもかかわらず継続して広告していたもので、最長では「契約後3年5カ月以上掲載」が認められた。
それでも、同協会の活動の成果として年々、おとり広告は減ってきているという。
不動産業界の事例からも、おとり広告を止めるには、社内の当たり前を変える相当な覚悟が必要だ。
スシローでは具体的な再発防止策を検討し、社告の内容を消費者庁に確認してもらっている。しかし、社内の文化になっている、商品の品切れは当たり前、売り切れ御免で許されるという感覚が刷新されないならば、意に反して、おとり広告は繰り返されるだろう。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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