むしろ客数が増えた! 「餃子の王将」の値上げ戦略が大成功した理由:業績も絶好調(3/4 ページ)
「餃子の王将」を展開する王将フードサービスは、2022年5月度に創業以来過去最高の売り上げを達成した。5月に主要メニューを値上げしたので、客離れが心配されていた。値上げしても客離れにつながらなかった理由とは?
新規顧客獲得と人材育成
2つ目の強化策は新規客獲得を目指した販促です。販促は3つの柱を作って行っています。
まずは、毎週金曜日の「生餃子セール」。これは毎週開催することで定番化し、家でギョーザを焼いて食べたいという新規の女性客集客につながったと思います。
次は、月替わり単品フェアです。毎月、目玉商品を作り、お得なセットにして単価アップを狙うという新規客増と単価アップの両方を狙うものです。
最後は低アルコール飲料の提案による新規客獲得です。お酒が飲めないノンアル派も取り込むための販促です。
こうしたキャンペーンをSNSの活用により、若年層にも告知していったことが、結果として新規客獲得に結び付いたのです。
3つ目は、人材育成です。
人材育成は「事業の要」と同社では考え、特にこの1年で教育にはかなり力を入れてきています。私はこれが同社の売り上げアップに大きな貢献を果たしたと考えています。
「王将調理道場」は伝統の調理技術と心を磨くことを学ぶ場ですが、この1年の受講者数は2万5000人以上です。オンラインで配信し、各店舗では自分のスマホなどで受講できるようにしたことで、受講者を大幅に増やしたのです。これが同社の味の安定につながったと思われます。
筆者のコンサルティング先で餃子の王将の話をしたところ、「最近、どのメニューも味が安定している気がする」と言う人が増えています。特にお客さんからの注文の多い14品目の調理技術を教えることで味を安定させ、いつどの店で頼んでも、味が一定という評価が得られているのではないでしょうか。これが餃子の王将のリピートにつながり、固定客を作っているのだと思います。
今はアルバイトのホールスタッフにもオンライン受講できる内容があるようで、あらゆる階層のスタッフに、さまざまな学習機会を作ることで店全体のQSC(クオリティー・サービス・クリンリネスという小売り・サービス業の店づくり3大要素)レベルを引き上げています。
こうした取り組みによって客数と客単価を引き上げたことが、値上げをものともしない結果を作り上げたのです。
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