なぜ「侮辱症状」を手渡したのか ハシモトホームとスルガ銀行の妙な関係:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
「社内イジメ」のニュースが飛び込んできた。青森県の住宅会社「ハシモトホーム」の営業社員が上司から罵声を浴びせられて、自殺をしてしまったのだ。それにしても、なぜ同社は侮辱症状」を手渡したのか。
「軍隊気質」の呪い
そういうルーツなので当たり前のように、軍隊と同じ問題が起きる。その最たるモノが「新兵イジメ」など現場へのハラスメントである。前出の記事でこう指摘させていただいた。
『軍隊は連戦連勝なら士気もあがって風通しもいいが、ひとたび勝ち目のない消耗戦へ追いやられると、旧日本軍のように上層部が現実逃避をはじめて、ガチガチに硬直した組織になる。結果、現場兵士の生命・人権を軽んじた机上の空論みたいな無茶な戦い方が行われる。さらに、規律が乱れて暴力衝動が水のように上から下へ流れるため、「新兵いじめ」などのパワハラもまん延する。1930年代の旧日本軍も、上官からボコボコに殴られた若者たちは「人生修練」だとありがたがったが、敗戦が近づくにつれて自殺者が出るような陰湿なイジメが増えていった』
筆者は、ハシモトホームでも同じことが起きたのではないかと考えている。もしかしたら12年ごろには、まだ「侮辱賞状」も楽しいイジりだったのかもしれない。表彰された人もバカにされながら「オレって、みんなにかわいがってもらってるな」なんて笑える余裕もあったかもしれない。
しかし、先ほどのデータを見ても分かるように、競合他社の脅威がジワジワと増して、「地域No.1ハウスビルダー」の座が怪しくなってくる。日本軍で言えば、ミッドウェー海戦やガダルカナルの戦いに惨敗して、流れが変わって防戦一方になっていったときだ。
こうなってくると、「新兵イジメ」などの現場のハラスメントはユーモアのかけらもなく、ただ陰湿でただ暴力的な、「逆境の責任転嫁」にされていく。
ザ・ブルーハーツの名曲「TRAIN TRAIN」の中に「弱い者たちが夕暮れ、さらに弱い者をたたく」という歌詞があるが、筆者はこれこそが日本のハラスメントの本質を突いていると思っている。日本の組織は「斜陽」になっていくと、「上」が生き残るために、弱い者から捨て石にしていくものなのだ。
あとどれぐらいの犠牲者を出せば、日本企業は「軍隊気質」の呪いから抜け出すことができるのか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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