6年ぶり黒字の銚子電鉄、これで「赤字」が消えた? 赤色ボールペン商品に脚光:「万年赤字」脱出に貢献
6年ぶりに黒字転換した千葉・銚子市のローカル鉄道、銚子電鉄(銚電)のあるグッズが注目を集めている。
当社はこれで赤字が消えました?!――。6年ぶりに黒字転換した千葉・銚子市のローカル鉄道、銚子電鉄(銚電)のあるグッズが注目を集めている。「赤字が消える!暗記セット」という商品名の赤色ボールペンだ。「何とか赤字を消したい」という同社の切実な願いを込めて制作した商品で、SNSでは「黒字になったので次は黒色のボールペンの販売を希望します」などと期待の声が寄せられている。
「幾度の廃線危機に直面しながらも、皆さまからの応援により、経営難を乗り越えることができており、今後も走り続けるため、少しでも赤字を消したいという思いが詰まった一品です」
銚電の公式Twitterアカウントが6月30日夜に発信した投稿には、翌7月1日午後8時現在、1400件を超える「いいね」が押され反響が広がっている。
銚電の竹本勝紀社長は同日、「株主総会で6期ぶりの黒字決算を報告することができました」と動画付きメッセージをSNSで共有した。共同通信によると、純利益は21万円で、前年度の純損失741万円から黒字転換を達成。営業収益は鉄道部門が7763万円(前年度比1.2%減)となったが、副業の物販部門で売上高4億5066万円(同13.3%増)となり、経営全体を支えた。
物販では「経営がまずい」という危機感を自虐的に込めたスナック菓子「まずい棒」や「ぬれ煎餅」などがSNSで注目を集め有名だが、赤色ボールペンにも銚電の切実な願いを込めている。
「赤字が消える!暗記セット」(税込500円)を発売したのは、コロナ禍の只中にあった20年秋。「離婚式」や「涙活」の考案者で、「まずい棒」の生みの親でもある寺井広樹さんと、銚電の竹本社長が共同で発案した。
当時、コロナ禍で乗客が減少し、赤字続きだった同社は「何とか赤字を消したい」という思いを込めて制作した。付属した赤いチェックシートをかざせば、赤色の文字が消え、受験勉強の暗記に役立つ。一方で「使用上の注意」には「当社は暗記よりむしろ忘れたいことが沢山ございます」と記す。
ボールペン本体には、万年筆ならぬ「万年赤字」と印字。あえて黒字で印字したのは「何とか黒字化したいという強い意志の表れ」(担当者)だという。
まずい棒のように飛ぶように売れるわけではないというが、銚電の自虐と遊び心が詰まった知る人ぞ知る商品だ。黒字を記念して黒色のボールペン販売を希望する声もあるが、「今後考えてみます」と担当者は話す。
銚電は銚子市内の銚子―外川間を結ぶ6.4キロを運行する2両編成のローカル鉄道。23年に開業100周年を迎える。「日本一のエンタメ鉄道」を目指し、物販販売に力を入れる。社長自ら「電車なのに自転車操業」などと苦しい経営状況を自虐的に表現し、ファンやサポーターを開拓している。
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