アップル勤務からTinderのトップに 「世界を股にかける」CEOの手腕:グローバルエリートのキャリア(1/4 ページ)
Tinderのレナータ・ナイボーグCEOに、これまでどんなキャリアを歩んできたのかを聞いた。
マッチングサービスは、新型コロナウイルスの感染拡大の中でも業績を伸ばした数少ない業種だ。同サービス世界最大手Tinderの親会社マッチグループの21年第4四半期の決算を見てみよう。
売上高は前年比24.8%増の29億8300万米ドル(約4074億円、7月27日現在)で、営業利益は同14.2%増の8億5200万米ドルと増収増益を果たし、パンデミックに強い事業モデルであることを示した。
有料会員数は、前年同期比15%増の1624万人。会員1人あたりの収入は同8%増16.16米ドル(約2200円)に達した。米国(アメリカ)で、過去1年間にオンラインをきっかけとして付き合い始めたカップルの60%は、マッチグループのいずれかのアプリを通して出会ったというデータもある。
そんなTinderを率いるのが、2021年9月にトップに就任したレナータ・ナイボーグCEOだ。同氏がITmedia ビジネスオンラインのインタビューに応じた。前編「Tinderのグローバルトップに聞く勝算 アジア太平洋で前年比25%増収を目指す」に続き、後編をお届けする。
Renate Nyborg(レナータ・ナイボーグ) 2020年にTinderに入社。ヨーロッパ、中東、アフリカにおけるビジネスを牽(けん)引し、経営、プロダクト、マーケティング、コミュニケーション、メンバーエクスペリエンスなど、多岐にわたるビジネス領域をリード。2021年11月にTinder初の女性CEOとして就任。キャリアは幅広く、瞑想アプリを手掛けるHeadspaceでインターナショナル・プロダクト&マーケティング・グループの創設リーダーを務めたほか、AppleでヨーロッパのApp Storeサブスクリプションビジネスを率いる。またアプリ開発会社Pleoを設立し、Edelmanではモバイル部門のグローバルディレクターに着任。ノルウェーとオランダにルーツを持ち、現在の夫ともTinderを通して出会う
アップルでネットフリックスの海外展開を支援
――ナイボーグCEOはアップルに勤めていましたね。今までどんなキャリアを歩んできたのか。
2015〜20年までアップルに在籍していました。アップルに採用された当初は、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマークといった北欧地域の事業推進担当でした。 北欧にはスーパーセル、ロビオ・エンターテインメント(ゲームのアングリーバードを開発した会社)、Spotifyなど大きな企業があるのですが、アプリストア上でビジネスが推進できるよう手助けをしていました。
昇進した後は、欧州のサブスクリプション担当になりました。サブスクの事業を推進しようとしている会社を全面的に私が担当し、欧州以外の会社でも欧州内で事業をしようとする企業、例えばネットフリックスなども担当しました。
私はこの分野では特に熱意があり、今の仕事に生かすことができてうれしく思っています。Tinderはテレビとの相性もよく、デートのリアリティショーを放送していた英国のITVとも連携しました。
――ネットフリックスとは、どんな仕事をしていたか?
ネットフリックスからは、海外展開をしたいという相談がありました。まずは60カ国でのサービス開始を目指しました。アムステルダムにネットフリックスの海外部門の本社があって、私もよく訪れました。ネットフリックスはローカルコンテンツを制作するために数億円のお金をつぎ込むこともあります。
彼らと2週間ごとに話をしていると「ドイツでは、この番組の人気がある」「スペインではこんな番組が人気だ」という話があがってくるので、App store上で人気作品の記事や写真を伴わせることで、利用者に「人気がある作品だ」と知ってもらうプロモーション施策などをやりました。
この経験はTinderでも生きています。ローカルエクスペリエンスを推進していく中で、ブラジルではカーニバルに合わせた施策を実施したりと、都市ごとに最適化した体験を提供することもできました。日本市場では、来年の花見に合わせて何かできないかと考えています。
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