生ごみが臭わない“冷やすごみ箱” ヒット商品は「ある家庭の冷凍庫」から生まれた:臭いが2万6000分の1に(2/3 ページ)
中西金属工業がこのほど発売した“冷やすごみ箱”「CLEAN BOX(クリーンボックス)」が話題になっている。ごみを凍らせることで細菌の繁殖とにおいを抑制する冷凍ごみ箱だ。ありそうでなかったこの商品が生まれたきっかけとは? 開発者に、話を聞いた。
開発当初は「逆風ばかり」
とはいえ、冷やすごみ箱には先例がないため、まだ市場が形成されていない。また法人向けのベアリングリテーナーを主力商品とするNKCは、コンシューマー向けの販路も持っていない。「冷凍回路を設計できるスタッフもいなかった。開発当初は逆風ばかりだった」と長崎氏は話す。
コンシューマー向けの製品を作っている家電メーカーの場合、新製品の開発に際しては機能や本体サイズなどの条件を設定した要求仕様書を用意し、その条件を満たす設計を進めていくところだ。ところがCLEAN BOXの要求仕様書は空欄だらけ。
「全く類例がない商品なので、そもそも要求仕様を決めようがなく、書けないことがとても多かった。モニターの声を聞きながら試作を繰り返した」と長崎氏は苦笑いするが、逆にCLEAN BOXは普通の家電メーカーでは作れない製品だとも言う。
「読めないマーケットに対する開発コストの問題、クレームのリスク、保守・メンテナンスの対応などを考えると、大手家電メーカーでは稟議書の段階で通らない可能性が高い」(長崎氏)
「なくなったら困る」 ユーザーからの声に支えられ、量産化
CLEAN BOXの販路には、生活提案型商業施設の「蔦屋家電+」(東京都世田谷区)を選んだ。長崎氏は「市場を形成するには、冷やすごみ箱のある生活を知ってもらう必要がある。その点で家電のあるライフスタイルを提案・発信しているプラットフォームである蔦屋家電+が最適だった」と話す。
開発に先駆けてクラウドファウンディング「GREEN FUNDING」で支援を呼びかけた。支援額は開始24時間で1000万円を超え、クラウドファウンディングが終了した4月末時点では992人から目標額の80倍超える4007万750円の支援を集めることに成功した。
支援者からは「生ごみやペットごみは、狭い家では大問題なんです!」「子どものおむつと生ごみの処理に苦労しているので届くのが待ち遠しい」「ペットのトイレシートの臭いが気になっていた。消臭効果のある価格が高めのシートを利用しても、ごみの収集日までには臭ってしまう」といった声が寄せられている。
このほど発売した2代目CLEAN BOXの開発に当たっては、初代を購入した100人に電話で使用感を聞き、改善すべき点を洗い出したという。
新製品では「もう少し大きいサイズが欲しい」との声を受けて容量を17リットルから20リットルに増やしたほか、冷却性能もマイナス10度からマイナス11度にアップ。さらにファンレス設計にすることで静音性も大幅に向上した。
「初代の発売から2年になるが、利用している方から『なくなったら困る』と言われて、CLEAN BOXが頼りにされていることを実感した」と長崎氏は話す。
関連記事
- “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - 「氷河期の勝ち組」だったのに……40代“エリート課長”に迫る危機
自分をエリートだと信じて疑わなかったサラリーマンが、社内の方針転換により出世のはしごを外されることがある。エリート意識や、能力主義への妄信が生む闇とは──? - 温泉でよく見るマッサージチェア トップシェアを勝ち得た企業がたどった「民事再生からの復活劇」
最近、街に「白くて丸い」マッサージチェア、あんま王が増えている。発売元の日本メディックは、2011年に民事再生を受けたという崖っぷちの状況からV字回復し、業務用マッサージチェアのトップシェアを誇るまで成長した。この10年に何があったのか。あんま王を開発した日本メディックの城田裕之会長に話を聞いた。 - ネットカフェの天下統一! 快活CLUBが、倒産相次ぐ業界で“独り勝ち”したワケ
インターネットカフェ業界が、ピンチに陥っている。かつて2000億円を超えていた市場規模は約1000億円にまで減少、倒産する企業も少なくない。そんな中、“独り勝ち”しているのが快活フロンティアが展開する「快活CLUB」だ。沈みゆく業界の中で、成長を続けられる秘訣はどこにあるのか。常務取締役、中川和幸さんに話を聞いた。 - 「底辺の職業ランキング」を生んだ日本 なぜ、差別とカスハラに苦しめられるのか
新卒向け就活情報サイトが公開した「底辺の職業ランキング」を挙げる記事が物議を醸している。記事が炎上した一方で、実際に一部の職業の人たちをさげすみ、差別する人がいることも事実だ。日本社会にはびこる差別とカスハラの正体とは──。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.