THE MATCH 2022が示したPPVビジネス成功の条件 日本のエンタメを変えるか:経済アナリストが分析(1/5 ページ)
THE MATCH 2022での那須川天心と武尊のメインカードは5万6399人の観衆が堪能した。さらに1放送ごとに課金をして視聴権を得るPPV(ペイパービュー)は50万件を超えたという。この成功が日本のエンタメ業界をどのように変えていくのかを、経済アナリストの森永康平が分析する。
6月19日、東京ドームで「Yogibo presents THE MATCH 2022」が開催された。“世紀の一戦“と謳(うた)われた那須川天心と武尊のメインカードを5万6399人の観衆が堪能した(以下、敬称略)。コロナ禍で開催された国内のスポーツイベントで、観客の動員が5万人を超えたのは同月6日のサッカー親善試合(日本―ブラジル戦)と、2021年12月に開かれたサッカー天皇杯決勝(浦和―大分戦)に続いて3度目のことだ。
Yogibo presents THE MATCH 2022が特異なのは動員数だけではない。用意されたシートは最も高いVVIP1列席で300万円、最も安いA席で1万5000円だった。しかし、この料金設定でも前述の通り5万人以上の動員を実現したのだ。さらに1放送ごとに課金をして視聴権を得るPPV(ペイパービュー)は50万件を超えたという。
チケット収入、PPV収入にスポンサー収益やグッズ収益なども加えれば、一晩で50億円以上を稼ぎ出した興行になったとうわさされている。今回の成功が日本のエンタメ業界をどのように変えていくのか。経済アナリストの筆者、森永康平が分析する。
Yogibo presents THE MATCH 2022はチケット収入、PPV収入にスポンサー収益やグッズ収益なども加えれば、一晩で50億円以上を稼ぎ出した興行になったとうわさされている(以下クレジットのない写真は(C)THE MATCH 2022)
スポーツ業界で浸透したPPV
日本ではスポーツ観戦といえば現地に足を運ぶか、家で地上波の放送を観戦するかが、ほぼ主流だった。だが、地上波の放送に代わる手段としてPPVの可能性が、いよいよ確実なものになっている。PPVとは名前の通り、放送をみるために都度課金するコンテンツを指す。PPVはスポーツ大国の米国では、すでに市民権を得ている。一方の日本では、多くの人が地上波での無料放送に慣れている現状があった。
しかし22年は、日本でもPPVが十分にビジネスとして確立することが、複数回にわたって実証された形だ。しかも、実証したのが野球やサッカーといった国民的スポーツではなく、ボクシングやキックボクシングだったのだから興味深い。1例目はAmazon Prime Videoで4月に放送された村田諒太とゲンナジー・ゴロフキンによるボクシング・ミドル級王座統一戦だ。
骨格的に日本人が活躍しづらいといわれるボクシングの重量級で、日本人ボクサーとして竹原慎二以来2人目のミドル級世界王者となり、オリンピックの金メダリストでもある村田諒太が、生ける伝説GGG(トリプルジー)ことゴロフキンと世界戦をした。
格闘技ファンの筆者からすれば課金をしてでも放送を見たい人が殺到するのは十分に理解できる。一方、日本でのボクシング人気はそれほど高くない部分もある。そのため、どれぐらい盛り上がるのか、興行としての結果に興味をもっていた。
関連記事
- 朝倉未来に聞く格闘技ビジネスの展望 「BreakingDownを世界一の団体にする」
「1分1ラウンド」で最強を決める総合格闘技エンターテインメント「BreakingDown」。プロモートする朝倉未来さんは「世界一の団体にする」と意気込む。そのビジョンを本人に聞いた。 - 脱地上波宣言!? THE MATCH 2022で潮目が変わった格闘技ビジネスのマネタイズ
6月19日、日本の歴史に残る格闘技イベント「Yogibo presents THE MATCH 2022」が東京ドームで開催された。「世紀の一戦」実現までの道のり、新たなビジネススキームの誕生、さらに加速したPPVによるマネタイズ。それぞれを見ていく。 - 那須川天心VS. 武尊の「THE MATCH 2022」、冠協賛は「Yogibo」 会場チケットは完売
6月19日に東京ドームで開催する「THE MATCH 2022」の冠協賛にビーズソファブランド「Yogibo」(ヨギボー)が決定した。 - 「朝倉未来vs.フロイド・メイウェザー戦」が9月25日に決定 さいたまスーパーアリーナで開催
「朝倉未来vs.フロイド・メイウェザー戦」が、9月25日にさいたまスーパーアリーナで開催することが発表された。 - 朝倉未来がプロモートする「BreakingDown5」 格闘技ビジネスの構造を変えるか?
朝倉未来さんがプロモートする「1分1ラウンド」で最強を決める総合格闘技エンターテインメント「BreakingDown」。その「BreakingDown」を運営する「バズるブランドを創る会社」レディオブック(東京都渋谷区)の代表取締役CEO・YUGOさんを新進気鋭の経済アナリスト、森永康平さんがインタビューした。 - “1分間最強”を決める「BreakingDown5」 全21試合の対戦カードを発表
7月17日に開催する「喧嘩道 presents BreakingDown5」全21試合の対戦カードが発表された。今大会からは女性選手も登場させ、女性の視聴者も取り込む狙い。 - “1分間最強”を決める「BreakingDown5」 21試合中、6試合の対戦カードを発表
7月17日に開催する「喧嘩道 presents BreakingDown5』全21試合中の6試合の対戦カードが発表。話題の選手を登場させることによって、視聴者の獲得を目指す。 - 会場チケットは20万円 “1分間最強”を決める「Breaking Down」、ライブ配信プラットフォームを提供
「1分1ラウンド」で最強を決める総合格闘技エンターテインメント「Breaking Down」は、オリジナルライブ配信プラットフォーム「Breaking Down LIVE」の提供を開始した。独自の配信サービスを展開していくことで、格闘技の面白さをアピールする狙い。 - 会場チケットは20万円 朝倉未来がプロモートする「BreakingDown5」、冠協賛は?
7月17日に開催する「BreakingDown5」の冠協賛に、SNSエンターテイメントが運営するスマホゲーム「喧嘩道」が決定した。 - 武尊が無期限休養へ K-1中村拓己プロデューサー「次の時代の格闘技ビジネスのために検証進める」
K-1の3階級制覇王者で現スーパーフェザー級王者の武尊(たける)選手が無期限での休養を宣言した。K-1プロデューサーの中村拓己さんに、THE MATCH 2022をどう振り返っているか、今後の格闘技ビジネスへの考えを聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.