大阪王将「ナメクジ告発」から考える “炎上”を招きやすい企業の特徴とは?:デジタル・クライシスの専門家に聞く(2/3 ページ)
大阪王将のSNS炎上問題。自社のネガティブな情報が拡散すると、多数の批判が寄せられ、ブランドも大きなダメージを受ける。炎上を起こさないために、企業はどんな対策を取るべきなのか。この問題に詳しい専門家に話を聞いた。
――「小さな声」を放置せず一つひとつ拾い上げることが重要なのですね
研究員: 「小さな声」は従業員の訴えだけではない。かつて、東京・渋谷のコンビニエンスストアで、ネズミが店内を走り回っている動画がSNSで拡散し炎上したことがある。実際には、炎上する1年以上前から、「ネズミがいる」との情報が、Googleマップの口コミ欄に投稿されていた。こうした利用者の投稿を企業が把握し、対処していれば炎上には至らなかった。ネット上の公開情報など、少なくとも目に見えるリスクは検知できる体制を構築しておくことが炎上を防ぐために重要だ。
――大阪王将の炎上後の対応についてはどう見ますか
研究員: 炎上後の対応自体は比較的早く、保健所の立ち入り検査の結果報告や清掃作業も終えており、事態は収束傾向にあると見ている。一方で、告発した男性は店舗をフランチャイズ経営するファイブエム商事の経営上の問題についても告発している。今後、ファイブエム商事側がどう対応・釈明するかは見ていかないといけない。
過去の事象も掘り起こされる「炎上の連続性」
今回の大阪王将の炎上では、男性の告発を発端として、「テークアウトした餃子が黒焦げになっていた」「通販で取り寄せた商品の包装に虫が入っていた」――など、大阪王将に関して別のユーザーからも苦情が複数寄せられた。
先月、米国の遊園地「セサミプレイス」で黒人の子どもが人気キャラクターにハグを求め拒否された動画がSNSで拡散し、炎上に発展した。この際も、「同様の被害を受けた」とする複数の投稿が別のユーザーからも寄せられ、当初の炎上に拍車をかける形となった。
――炎上が別の炎上を呼ぶ動きが見られます
研究員: これは炎上の性質であり、われわれは「炎上の連続性」と呼んでいる。一種の「#MeToo(ミートゥー:「私も」の意)」の動きと同じで、誰かが声を上げてくれたことで、「私も」と声を上げやすくなる。炎上は「縦」と「横」に広がる特徴がある。縦は、同じ大阪王将の別店舗でも同様の問題がある、といった投稿が続く動き。横は、同じ食品業界の別企業でも同様の問題がある、といった声が挙がる動きだ。こうした炎上の波及を防ぐためには、世の中で発生する炎上事例を吸収し、自社に波及すればどういった観点が考えられるのか、というケーススタディをどれだけ踏めるかが重要になる。
関連記事
- 大阪王将「誹謗中傷につながる記載やめて」 SNS告発で注意呼びかけ
「大阪王将 仙台中田店」で、「ナメクジが発生している」などとSNS上に書き込まれたことについて、大阪王将は7月28日、新たな文書を公式Webサイトで公表し、「個人を特定するような記載、または誹謗中傷につながる記載はお控えいただきますようお願い申し上げます」などと呼び掛けた。 - 大阪王将「ネコ飼育、衛生上認められず」 保健所による調査結果を公表
仙台市にある中華料理チェーン店「大阪王将 仙台中田店」で、「ナメクジが発生している」とSNS上に書き込まれたことについて、大阪王将は7月27日、保健所による立ち入り調査の結果を同社公式Webサイトで公表し、改めて謝罪した。同店舗では2019年10月〜22年6月まで、店舗屋外でネコを飼育していたことが判明したといい「衛生上認められず、警察に届け出をすることを怠っていた」などと説明した。 - 悪質クレーマーは「排除の対象」と判断を――乗客怒鳴ったJR駅員の対応、弁護士はどう見る?
JR山手線の渋谷駅で、線路に財布を落とした男性が非常停止ボタンを押し、駅係員が激高する様子を映した動画がSNSで拡散し、波紋を呼んだ。身勝手な行動を取る利用客に対して、企業はどう向き合うべきなのか。 - 刺身に電気を流して「アニサキス」撲滅 苦節30年、社長の執念が実った開発秘話
魚介類にひそむ寄生虫「アニサキス」による食中毒被害が増えている。この食中毒を防ぐため、創業以来30年以上に渡り、アニサキスと戦い続けてきた水産加工会社がある。昨年6月、切り身に電気を瞬間的に流してアニサキスを殺虫する画期的な装置を開発した。開発秘話を社長に聞いた。 - KDDI高橋社長の緊急会見 「賞賛」と「炎上」の分かれ道はどこにあったのか
大規模な通信障害を起こした通信大手のKDDI。総務省に早期の情報公開を促されて記者会見を開くなど、初動の遅れに批判が集まった一方で、会見で見せた高橋誠社長の説明にはネットユーザーを中心に評価の声が上がる。KDDIの緊急会見から、企業が教訓として学べることは何なのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.