“とりあえず出社”求める愚 「テレワーク環境」を整えない会社に未来はないと思うワケ:在宅勤務なぜ半減?(1/4 ページ)
コロナ禍で高まったテレワーク推進機運は、経団連の見直し提言もあり、実施率が下がっている。テレワーク環境が整っていなければ、ワークライフバランス環境で見劣りし、他社の後塵を拝することにもつながる。
2005年に総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省などが連携して立ち上げたテレワーク推進フォーラムの設立趣意書には、以下のように記されています。
「テレワークは、就業者の仕事と生活の調和を図りつつ、業務効率の向上を実現する柔軟な就業形態であり、この普及を通じて、少子・高齢化や地球環境、災害時の危機管理等の社会問題の解決に向けた貢献ができるものと期待されている」
かねてテレワークのメリットは認識されており、設立趣意書に書かれている内容は現在でもそのまま通用するものです。しかし、これまでテレワーク月間やテレワーク・デイズなどさまざまな活動を通じてテレワークの導入促進が図られてきたものの、ずっと思うようには広がってきませんでした。
ところが一転、とても皮肉なことに今世紀最大の世界的災厄と言えるコロナ禍の発生が契機となり、テレワークの導入が一気に進みました。
日本生産性本部の「働く人の意識調査」によると、コロナ禍による最初の緊急事態宣言が発出されたころのテレワーク実施率は31.5%。1001人以上の会社に限ればその比率は5割に及びます。職務的に難しいなどの理由で自分はテレワーク経験がなかったとしても、同僚や家族、友人・知人など周囲の経験者がケタ違いに増えたことで、現実味がなく夢の働き方のようだったテレワークが身近な存在となったのです。その点において、コロナ禍に苦しんだこの数年は歴史的転換点だったと言えます。
しかしながら、テレワーク実施率31.5%は調査開始以来ずっと最高値のままです。7月に発表された「第10回働く人の意識調査」では16.2%に半減してしまいました。産経新聞は7月25日、「7月のテレワーク実施率16.2% 過去最低に 生産性本部調査」と題した記事で、「政府による緊急事態宣言などの行動規制はなく、企業によるテレワークの退潮が垣間見える結果となった」と報じています。
最初の緊急事態宣言を受けて一気にテレワークが広がったころ、「思い切ってやってみると意外とできた」といった声が聞かれました。コロナ禍発生前からインターネット環境が整っていた職場は多く、ZoomやMicrosoft TeamsなどWeb会議システムの利用も広がり、このままテレワーク実施率はどんどん上がっていく可能性を感じました。
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