副業収入300万円未満は雑所得に?……国税庁の狙いは“サラリーマン副業”潰しか: 古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)
国税庁が8月1日に公表した「所得税基本通達」の一部改正案が、逆進課税的であるとして物議を醸している。「働き方改革」などと銘打って副業やダブルワークなどを推進してきた政府だが、ここにきてサラリーマンの副業を実質的に規制する施策を検討しているのは矛盾とも思える。
所得が増えるごとに税率も上がるという「累進課税」は一般的な税の仕組みである。その一方で、所得が一定を下回ると税負担が増える「逆進課税」は格差拡大を助長するものとして避けられなければならない。
しかし、国税庁が8月31日までの期間で意見募集(パブリックコメント、パブコメ)を始めた「所得税基本通達」の一部改正案が、逆進課税的であるとして物議を醸している。
具体的には、副業の収入が月額25万円を下回る会社員の副業所得にメスが入る。サラリーマンで副業を行っている人の収入が年間300万円を下回る場合は、原則としてその所得を税務上の融通が効きやすい「事業所得」ではなく、ほぼ融通の利かない「雑所得」とするというものである(そのため、副業をしていないサラリーマンは増税とならない)。
この規制案の最も大きな変更点は、他の所得区分と「損益通算」ができなくなることである。仮に副業が「雑所得」に組み分けられてしまうと、会社に勤めながら副業にチャレンジして赤字になった場合に、本業の給与と損益を通算して税負担を軽減できなくなる。
極端な例では、副業の赤字が給与額を超えた場合に、合計の所得はマイナスでも給与所得にかかる所得税はそのまま支払わなければならないといったことも起こり得るのだ。
「働き方改革」などと銘打って副業やダブルワークなどを推進してきた政府だが、ここにきてサラリーマンの副業を実質的に規制する施策を検討しているのは矛盾とも思える。副業だけで「月あたり25万円(年間300万円)」をクリアできる副業サラリーマンはどれほど多いだろうか。
事業所得では、青色申告特別控除という、最大65万円の所得控除が認められる。しかし、雑所得となるとこの適用はない。つまり、副業の年収が300万円を超えない副業サラリーマンの場合、事業所得の場合と比較して65万円に相当する税金を余分に支払わなければならなくなる。
「収入が月当たり25万円未満」という収入が“低い”場合のみに適用される特例であることからこれは「逆進課税」といってもいいのかもしれない。
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