日本の会社も“他人事”ではない トランプ前大統領のスパイ容疑:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
自宅に家宅捜索が入った米国のトランプ前大統領だが、公文書の持ち出しや文章改ざんの恐れという法律違反に加えて、スパイ防止法違反の容疑も含まれている。ここ数年の同氏の怪しい動きとは……。
「忘れていた」では済まされない時代に
少し前だが、セキュリティ企業トレンドマイクロが行った調査(09年)では、社会人の58.0%が、転職や部署異動の際に、業務で使っていた情報を持ち出したいと考えていることが明らかになっている。
しかも85.7%がバレないと考えているらしい。現在データはデジタル化されているので、アクセスの記録は残る。関係のない部署のデータにアクセスしただけで、バレてしまう時代だ。実際、筆者も知り合いの会社経営者から、そうしたケースが社内で問題なった話を聞いたことがある。
さらに、外国の何者かに情報や製品が渡ってしまえば、それは米国のようにスパイ行為に当たる。ただ日本にはスパイ防止法がないので、業務上横領罪、不正競争防止法、窃盗罪、公務員なら守秘義務違反などで罪を問われることになる。
もはや「忘れていた」「そんな大ごとだとは思わなかった」といった言い訳が許されない時代になっている。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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