Cookie制限で、広告効果は目に見えて悪化──それでも「最大40%」改善できたのはなぜ?:脱・Cookie頼みのWebマーケ(1/2 ページ)
デジタルマーケティングの世界は今、大きな曲がり角に差し掛かっている。50以上のアパレルブランドを運営するTSIホールディングスも、Cookie制限の強化に伴い明らかに売り上げやCVRなどが悪化していたというが、各種指標を「最大40%」改善できた。その取り組みとは?
「クッキーレス時代」を迎えWebマーケティングは大きな転換期に
デジタルマーケティングの世界は今、大きな曲がり角に差し掛かっている。これまでWeb広告の効果分析やリターゲティングに欠かせない技術だった「サードパーティーCookie」が、ユーザーのプライバシー保護の観点から利用に大幅な制限が掛かるようになり、従来のマーケティング手法では十分な広告効果を得られなくなってきたのだ。
既にAppleが開発・提供するブラウザ「Safari」は、サードパーティーCookieを用いたユーザーの行動追跡を抑制する機能「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」を段階的に強化しつつあり、またGoogleのブラウザ「Chrome」も2024年後半にはサードパーティーCookieのサポートを廃止する予定だ。
さらには欧州のGDPRや日本の個人情報保護法など各国・地域が定める法規制においてもやはりユーザーのプライバシー保護の観点から、特定条件におけるCookieの利用に際しては事前にユーザー同意を取得するよう定めている。こうした技術・制度の両面における急激な環境変化を受けて、これまでCookieを用いたWebマーケティング手法を長らく使って成果を上げてきた企業は、現在「クッキーレス時代」「アフタークッキー時代」に向けて大きな方針転換を迫られている。
TSIホールディングスでも、独自の施策を展開してきたが……
現在50以上のアパレルブランドを運営するTSIホールディングスも、そうした企業の1社である。同社は数多くのアパレル店舗を運営するとともに、ECチャネルを通じた販路拡大にも現在力を入れており、店舗とECを融合したシームレスな顧客体験を実現するために独自のデジタルマーケティング施策を展開している。
その中心的な施策の一つが、CDP(Customer Data Platform)システムの導入だった。20年10月から、CDPソフトウェアベンダー大手の米トレジャーデータ社が提供するクラウド型CDPシステム「Treasure Data CDP」の導入を進め、自社のECサイトを訪れたユーザーの行動履歴データを中心とする各種顧客情報を一元管理するとともに、さまざまな角度から分析・分類できる仕組みを実現した。またこうして分析・セグメント化した顧客情報を、Web広告の出稿媒体のシステムやMA(Marketing Automation)システムなどと連携させることで、Web広告やOne to Oneマーケティングの最適化や作業効率化も図ってきた。
制限の強化に伴い、目に見えて広告効果が悪化
CDPを導入することにより、それまで手動でWeb広告の配信先リストを作成して出稿媒体のシステムにアップロードしていた作業が自動化されるため、業務効率の大幅アップが期待された。しかしそれと同時に顕在化してきたのが、冒頭で挙げたサードパーティーCookieの制限に伴う問題だった。同社のデジタルビジネスディビジョンデジタルマーケティング部 データマネジメントセクション 上石萌子氏は、当時抱えていた課題を次のように振り返る。
「サードパーティーCookieの制限が厳しくなったことで、明らかに売り上げやROAS(広告費の回収率)、CVR(コンバージョン率)などの指標が悪化していました。そのため、サードパーティーCookie以外の手法を用いて広告効果を計測・評価する必要があると考えていました」
関連記事
- 法改正に伴うCookie対応、BtoB企業はどこまで必要? 英語ページで変えるべき? 専門家に聞くQ&A
2022年4月に迫る個人情報保護法の改正に備え、自社のCookie対応などをどこまでするべきか迷っている担当者は少なくないだろう。「BtoB企業はどこまで対応すべきか?」「英語ページと日本語ページで対応を分けるべきなのか?」などの疑問に、弁護士・ニューヨーク州弁護士の石川智也氏が回答した。 - Cookieが廃止・規制されたら「別の方法」はある? ポストCookie時代の対応Q&A
Cookieの規制が進む中、来たるべき「ポストCookie時代」には、どのような手法が代わりになるのか? 何から対応を始めればいい? ユーザーの同意取得は、どのように管理すべきか?──Q&A形式で解説をお届けします。 - Cookie規制って結局、何が変わるの? 2022年の改正個人情報保護法、注目すべきポイントを解説
Google ChromeなどのCookie廃止、2022年の改正個人情報保護法──Web広告やデジタルマーケティングを巡る状況は大きく変化しています。世界的な潮流から国内の影響までを解説します。 - Cookie対応は「ポップアップを導入したから安心」ではない 改正法に備え、企業はどこまで対応すべきか
これまでCookieの扱いについては明確な指針が示されてこなかったが、22年4月より施行される改正個人情報保護法で、国内法としては初めて明確な規制が加わることになる。 - 【Q&Aで簡単理解】Cookieとは? 規制で何が変わる? 広告ターゲティングへの影響は
サードパーティーCookieとは? Cookie規制で、全く使えなくなる? 規制されないCookieもある?──よくある疑問を、Q&Aで解決。Cookie規制が広告施策や、デジタルマーケティング全体に与える影響についても解説します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.