ミートショックが仙台の「牛タン専門店」を直撃 一時は約3倍になった仕入れ値、どう乗り越える?:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/4 ページ)
牛肉の輸入価格が高騰している。仙台の牛タン専門店も、仕入れ値が急上昇しており、値上げなどの対応を迫られている。現場で何が起きているのか?
業界の結束で乗り切る
このように、食糧難を乗り切る庶民の味としてスタートした牛タンであったが、次第に仙台名物として普及。特に東京からの出張族に好まれた。さらにはヘルシーな料理とメディアに紹介されて、1980年代の旅行ブームで、女性からも好まれるようになった。
国産の牛タンでは量的に足りなくなり、海外産、特に米国産が使われるようになって、現在に至っている。この頃、日米貿易摩擦により、安価な牛肉の輸入が本格化したのも、仙台牛タン焼にとっては追い風となった。
90年には、仙台駅の駅弁業者、こばやし(仙台市)がひもを引いて加熱する方式の「あったか〜い仙台名物炭焼き牛たん弁当」を発売。牛タン弁当は以降、仙台駅の駅弁の定番中の定番となっている。
順調に発展を続けた仙台の牛タン焼であるが、2002年に国内でBSE感染牛が確認され、一気に牛肉離れが進んだ。米国産の牛タンが禁輸になった影響も大きかった。
牛タンの危機に、それまで店が各自で秘伝の技や調理法を守り、閉鎖的な業界といわれてきた仙台の牛タン業者5社が結集。仙台牛たん振興会が発足している。現在の会長は喜助の大川原潔代表、副会長は利久の亀井利二代表。東名阪にも進出している名店の経営者がリーダーで、加盟企業は15社にまで増えた。毎年15万〜20万部の牛タンマップを制作して、宮城県内の観光関係部署に配布するなど、牛タンの振興に尽力している。
牛タン焼の商品力、先述のメニューミックスの効果もさることながら、業界の結束力が衰えぬ牛タン人気の支柱になっている。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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