「セルフレジ」を支持している人は多いのに、なぜスーパーでなかなか普及しないのか:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
Yahoo!ニュースとITmedia ビジネスオンラインが共同で企画した調査によると、約8割の人が「セルフレジ」を使っていることが明らかに。その一方で、セルフレジの導入はなかなか進んでいない。その背景に、何があるのかというと……。
「おしゃべり専用レジ」が話題
日本ではまだあまり知られてないが、世界ではポジティブサイコロジーという言葉があって、人の精神状態、特に孤独が健康長寿に大きな影響を与えることが分かっている。
そこで孤独対策のひとつとして、誰もが毎日のように通うスーパーの役割が注目されているのだ。例えば、オランダの大手スーパーチェーン「Jumbo」(ユンボ)は21年9月、「おしゃべり専用レジ」の設置を発表した。これは、商品の支払い時に顧客が店員と世間話などを楽しむことを目的としたレジで、1年をかけて全店舗の約3割に相当する200店舗に導入を進めている。
もちろん、スーパーには急いでいる人もいるので、そのような人たちは通常のレジカウンターやセルフレジを利用する。あくまで店員とのコミュニケーションを楽しみたい、ゆっくり会計をしたい人向けの専用レーンという位置付けなのだ。
では、この「おしゃべり専用レジ」のメインターゲットはどんな人たちかというと、もうお分かりだろう、高齢者だ。実はオランダでは、75歳以上の高齢者の33%がなんらかの孤独を感じている調査もあって、政府が孤独対策プログラムに力を入れており、「Jumbo」もそれに協力しているのだ。
『平成30年版高齢社会白書』(内閣府)によれば、オランダの高齢化率は18.5%(17年)で、日本に比べるとまだかなり低い。が、実は日本のように「2世帯同居」という風習がないので、パートナーと別離すると即座に「1人暮らしの高齢者」になるので、その割合は日本以上の4割弱にもなっているのだ。
もちろん、「孤独」は高齢者だけの問題ではない。オランダ以外の国でも「今日1日、誰ともしゃべらなかった」という人が唯一、生きた人間と言葉と交わす場所として「有人レジ」の役割が見直されているのだ。
『フランスでは、カルフールなど大手スーパー各社が、長引くパンデミック中の孤独感軽減対策として「おしゃべりレジ」を開設する動きが広まっている。このレジで会計を済ませる人たちは、列の後ろに並ぶ人の目を気にせずに、レジ係としばらく世間話をしてもいい、という趣旨だ。今年1月から始まったこの動きは全国に広がりを見せ、すでに150の「おしゃべりレジ」が開設されたという』(NewsWeek 2022年2月17日)
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