都会から移住、朝食屋に行列 『鎌倉殿の13人』で注目の「鎌倉」で何が起きているのか:長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)
NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が話題になっている。鎌倉市では観光客向け施設を出店する動きがある一方で、都会から移住する人も目立っている。
アフターコロナのライフスタイルを生み出す
朝に強く、夜が早い鎌倉だが、観光客らが横浜、箱根、東京に宿泊してしまう現状を変えようと、ホテルを建設する動きがある。20年4月には、鎌倉駅東口にJR東日本ホテルズが138室で、「ホテルメトロポリタン鎌倉」をオープンした。
「材木座テラス」1階には、カフェと一体になった6室と4室の小さなアットホームな宿が2軒並んでいる。目の前にある海などの景観は抜群だ。6室の「グッドモーニング材木座」は20年12月に、同じ材木座の逗子寄りの場所から移転してきた。4室の「材木座シーズンズ」は20年5月にオープンした。
20年11月、鎌倉駅西口にオープンした「カマクラホテル」は、外食大手のDDホールディングス傘下の湘南レーベル(神奈川県藤沢市)が提案した16室の和をテーマにした小規模なホテル。
宿泊者限定のフィンランド式サウナは「お茶」をテーマに、茶室のような貸し切りのプライベート空間となっている。通常は水を使うロウリュ(高温の石に水をかけて蒸発させる)にお茶を使用。お茶の香りに包まれて温まる趣向だ。1階には午後5時から利用できる国産酒専門のバーがある。
鎌倉では夜に飲める場所は少ないが、「月見つくねを鎌倉で」という居酒屋が、20年3月にオープンしている。同店は、吉祥寺と渋谷でハンバーグ専門店「挽肉と米」がヒット中の飲食プロデューサー、清宮としゆき氏が手掛けたものだ。小町通りから入った路地にあり、炭火で焼くつくねや季節の果物を使ったサワーが売りだ。鎌倉の多くの店が提供するシラス丼に飽きてきた観光客などが、立ち寄ってみたくなる店だ。
このように、大河ドラマに向けて鎌倉は独自の朝食文化や、海と歴史が融合した観光の魅力をブラッシュアップさせてきた。そして、コロナ禍を機に拠点を移した新しい住民を巻き込み、アフターコロナの職住近接でゆったりと暮らすライフスタイルを生み出す先端となっている感がある。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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