ピラミッドを立て直し「100年続くK-1」に 中村プロデューサーに聞く「武尊vs.天心の舞台裏」:「消滅」から立て直しまで(2/5 ページ)
新しい格闘技のビジネスモデルを開拓しているのがK-1だ。一度消滅したK-1が今、目指すものは何なのか。K-1の中村拓己プロデューサーに聞いた。
失敗を繰り返さないために組織化
――格闘技の大型イベントが続いた中、THE MATCHを終えました。どのように今の格闘技界を捉えていますか?
まずK-1の歴史的経緯を簡単に説明しますと、K-1は1993年に始まり、テレビ放送もされて人気が出たものの、2012年に国内の活動を休止しました。その後、約2年間は姿を消したのですが、14年に「K-1実行委員会」という組織を作りました。同年7月にアマチュアの大会を、同年11月にプロの大会の活動を始め、現在7年目を迎えています。K-1という名前は同じですが、昔とは別の組織なのです。
THE MATCHでは、私が制作実行委員会のメンバーに入りました。K-1単独による開催ではないものの、今の体制になってから最も大きな大会でした。他のイベントと比較するのが適切かは分かりませんが、格闘技界としてもライブエンターテインメントとしても歴史に残る大会を開催できたと思っています。キックボクシング、立ち技に限定した格闘イベントで、これだけのことができたことは本当にうれしいです。
――7年間の新生K-1の歴史の中で、ドーム開催は初めてですよね?
今までは一番大きくて、さいたまスーパーアリーナ・メインアリーナや代々木第一体育館でした。今回のイベントはRIZINさん・RISEさんとの協力があり、同じ時期にK-1の武尊、RISEの天心という選手がいて、「両団体の最強選手が戦ったらどうなるのか?」という、格闘技ファンの枠を超え、世間を巻き込んだ試合があったから実現できたことです。
――開催するにあたり、何が難しかったですか?
これまでRIZINさんやRISEさんとは接点がほとんどなく、武尊選手はK-1、天心選手はRIZIN・RISEで戦う選手ということで、戦っている舞台が違いました。ですから対戦を実現させるのは簡単ではありません。
これまでの格闘技団体ではワンマッチ契約が多く、いろいろな団体の試合に出やすいことが多かったのです。ですが、それでは選手の育成や「この選手を売っていく」ということは難しかったと思います。
現在のK-1は、選手とある程度の期間を設けて選手契約をして試合を組みます。そのシステムの中でやっているK-1の選手と、そうではない団体や選手との交流は、基本的に難しいものがありました。
――もう少し具体的に教えてください。
これは歴史や経緯にも関わる話になりますが、前のK-1がなくなったのは非常に大きな出来事でした。3つの放送局が放送をしていて、ゴールデンタイムの生中継、大みそかにも興行をやるほどの人気だったのに、それがなくなったわけです。
要因を考えると、興行の比重が大きくなりすぎて、選手が足りなくなったり、新しい選手もいなかったり、人気のある選手が出場しないと数字が伸びなかったりといった事態が発生していました。
その競技をほとんどやったことがなくても、数字を取れる選手が試合に出ることもありました。結果、イベント優先の作りになってしまい、他の部分も破綻していってしまいました。
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