トヨタの危機管理は「さすが」なのか 香川さんの「CM放映停止」:スピン経済の歩き方(2/7 ページ)
トヨタ自動車の危機管理が称賛されている。俳優・香川照之さんとの契約更新をしない方針を明らかにしたことを受け、「さすが、トヨタ」などと評価されているわけだが、本当にそうだったのか。振り返ってみると、精細を欠いている部分があって……。
トヨタの対応がビミョー
なぜそんなことを言えるのかというと、このように社会的地位のある人物が女性に対して性加害や暴行を行ったとき、広報からあまり聞くことがないある言葉が発せられたからだ。それは「注視」だ。
メディアがやたらと「速い」「迅速」とヨイショをするが、実はトヨタが香川さんのCM放送を停止したのは、性加害報道がでてから1週間経過してからだ。では、第一報が出てから対応を決めるまで、「危機管理のトヨタ」はどうしていたかというと、「香川さんへの同情論」が盛り上がるのをじっと待っていた。
8月24日に『デイリー新潮』が最初にこの問題を報道した翌々日の26日、香川さん自身がMCを務める情報番組『THE TIME,』で事実を認めて謝罪した。それを受けて、トヨタはこんな対応をしていた。
『トヨタ広報部が26日、日刊スポーツの取材にコメントした。同部は「香川照之氏に関する一部週刊誌での報道内容については、社会的に許されざる行為であり、大変残念に思います。本件は、当事者間で解決がなされており、また、ご本人も深く反省し、謝罪されていると伺っております。私どもとしても、今後を注視させていただきたいと考えております」として、推移を見守りつつ香川を継続して起用する意向を明かした』(日刊スポーツ 8月26日)
「素晴らしいコメントじゃないか! まったく非の打ちどころのない理想的な危機管理だ」と称賛される方も多いだろうが、これは企業危機管理としてはかなりビミョーなもの言いだ。
「今後を注視」というのは、基本的に「できることならこのまま不問にしたい」ときに使う表現だからだ。
例えば、広告に起用したタレントが不倫をしたが、当事者間で既に解決もできていて、そこまで大きなバッシングに発展しそうもないときには、このような表現を使うことが多い。世の中が許してくれるのなら、弊社としては特にお咎(とが)めなしで、起用し続けたいんですけど……という思いがにじむ「静観」のコメントなのだ。
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