トヨタの危機管理は「さすが」なのか 香川さんの「CM放映停止」:スピン経済の歩き方(3/7 ページ)
トヨタ自動車の危機管理が称賛されている。俳優・香川照之さんとの契約更新をしない方針を明らかにしたことを受け、「さすが、トヨタ」などと評価されているわけだが、本当にそうだったのか。振り返ってみると、精細を欠いている部分があって……。
「静観」ではなく、一発アウトの案件
これは今回のケースにそぐわない。トヨタ広報が「社会的に許されざる行為」と述べているように、ホステスの下着を剥(は)ぎ取って、胸をもんでさらに頭を鷲掴(わしづか)みにする行為は、「不倫」とはまったく違う。しかも、女性への性暴力告発が衆目を集めるような海外ならば、とても「静観」できない一発アウトの案件だ。実際、米国のハリウッドでは、十数年前のセクハラで、大物映画人たちが仕事を失っている。
つまり、トヨタは今回の危機管理によって、銀座のホステスの下着をはぎ取って、直に胸を触ってキスをする性加害というのは、「不倫」と同じレベルで「第三者がごちゃごちゃ口を出す問題ではない」ことを社会に示してしまったわけだ。さまざまな国で幅広くビジネスを展開する世界的グローバル企業として、これはかなり「ぶっ飛んだ危機管理」だと言わざるを得ない。
職場や仕事関係のつながりのあった男性から、性暴力を受けた過去を女性たちが告発する「#MeToo運動」のようなムーブメントをしている人たちから見れば、「トヨタは女性への性暴力を容認するのか」ということになってしまうからだ。というわけで、世界の潮流を踏まえれば、こんなコメントのほうが適切だ。
「トヨタ自動車はあらゆるセクハラやパワハラを認めません。本件も当事者間で解決をして、ご本人も反省をしているとはいえ、トヨタの理念とは大きく異なるものであり、これを容認できることは断じてできません。今後の対応は未定ですが、香川さん側と話し合いをして適切に対処したいと思います」
これならば契約解除するにしても、CM契約を継続するにしても、トヨタは「客」という優越的な立場の人間(香川さん)が、弱い立場の女性へのセクハラや暴行を決して許さないというスタンスを世に知らしめることができる。ただ、トヨタ広報をかばうわけではないが、このような厳しいスタンスになれなかったのも無理はない。外国人にはなかなか受け入れ難いところだが、基本的に日本では「水商売の女性は社会的地位の高い男性からはある程度の性暴力を受けてもしょうがない」という暗黙のルールがあるからだ。
22月6月、元舞妓を名乗る女性がTwitterで告発した内容が分かりやすい。
『この世から抹消されるかもしれんけど、これが舞妓の実態。当時16歳で浴びるほどのお酒を飲ませられ、お客さんとお風呂入りという名の混浴を強いられた(全力で逃げたけど)。これが本当に伝統文化なのか今一度かんがえていただきたい』
『旦那さん制度、まだあります。(略)私は5000万円で処女を売られそうになった』『身八つ口から手を入れられて胸を触られることも、個室で裾を広げられてお股を触られたこともあります』
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