なぜAOKIは“うまみ”の少ない五輪のために、「危ない橋」を渡ったのか:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
紳士服大手AOKIの前会長・青木拡憲氏が贈賄疑惑を認め始めた、とマスコミ各社が報じた。それにしても、なぜAOKIは“うまみ”の少ない五輪ライセンス商品のために、「危ない橋」を渡ったのか。その背景にあるのは……。
「東京五輪」という妄想
このような話をすると、「これだから素人は困る、五輪のオフィシャルサポーターをしています、という宣伝効果はカネには換え難いものがあるのだ」とか「グッズがそんなに売れなくてもブランドイメージや社会的信用度が増すことを考えれば安いと判断したのでは」と主張される方もいらっしゃるだろう。
ただ、本件で筆者が理解に苦しむのは、まさしくそこなのだ。というのも、AOKIの元会長らは、東京五輪に対して国内外からダーティーなイメージが定着してから汚職に踏み切っているからだ。
東京地検特捜部の逮捕容疑によれば、AOKIが高橋元理事にオフィシャルサポーター契約や公式ライセンス商品の販売契約で便宜を図って欲しいと依頼をしたのは17年1月からで、実際に「コンサル料」なる賄賂を払い始めるのは同年10月からだ。
先ほども申し上げたように、16年5月から国内外のメディアがJOCや電通の「五輪裏金疑惑」を追及している。つまり、AOKIの元会長らは、世間に「五輪の裏にはきな臭い話が山ほどあるんだな」というイメージが急速に広まりつつあったタイミングに、疑惑の渦中にあった高橋元理事の汚職に本格的に関与し始めているのだ。
「大胆不敵」というべきか、「自分たちは何をしても許される特権階級だ」などと思い込んでいるのでは、と不安になってしまうほどのモラルの壊れっぷりだ。
AOKIほどの大企業の経営陣がなぜこんな大逆風の中、メディアからも疑惑の目を向けられていた高橋元理事に裏金を払おうと決断したのか。なぜ「うまみ」の少ないライセンス商品を、犯罪に手を染めてまで売ろうと思ったのか。
これから捜査や司法の場で、ご本人たちの言葉で語られるだろうが、本質的なところで言ってしまうと、経営陣の皆さんが「昭和の妄想」を引きずっていたことが大きいのではないかと個人的には感じている。
それは一言で言ってしまうと、「オリンピックをやると景気が良くなって日本経済も復活する」という妄想だ。学校の近代史の授業などでも、1964年の東京五輪というのは、日本が戦後の復興から、世界第2位の経済大国に成長をしたきっかけになったイベントとして教えられる。
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